あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

column男木島で暮らす

May 15, 2020

文・写真 河西範幸/スペルデザインワークス

瀬戸内海中部に位置する男木島(香川県・高松市)でのリノベーション施工例を執筆します。

【男木島】

男木島は高松港からフェリーで40分の場所に位置する島です。
男木島は現在160人程度の人が生活をしています。数年前から瀬戸内国際芸術祭と小中学校の再開がきっかけとなって移住される方が増え、いまでは島民の1/3ほどが移住者となっています。以前は平均年齢が70歳を超えていて島民の高齢化が著しい過疎の島でしたが、最近は子供たちが駆け回る賑やかな島へと変化しました。

屋根工事

解体中の様子(撮影 額賀順子)

【男木島の元牛小屋】

男木島のまちは、急斜面を沿うように家々が作られていて、それらを縫うように狭い道が通り集落が形成されています。男木島では一昔前までは労働力として一世帯ごとに牛を飼う文化があり、多くの家には今なお牛小屋が倉庫として残っています。
 大阪で会社の経営をされているご主人(福井大和さん)の出身地が男木島で、島で暮らしたいという家族の仕事場を実家の脇にあった牛小屋をリノベーションして作りました。
 築70年以上まえの簡素な作りであった建物を現在の建築基準法に適合させ耐震化を行い、敢えて美しく納めず福井夫婦(福井大和さん、福井順子さん)がDIYを楽しめる様なデザインを試みています。建物の工事中にちょうど小中学校の旧校舎の解体があり、黒板や机、床材などを許可をもらって頂戴し、内装に使用しました。

  • 牛小屋外観
  • 牛小屋内観

元牛小屋をリノベーション

幼い日々を過ごした思い出が残るような懐かしい感じのする空間となりました。

【男木島図書館の屋根と2階の改修】

男木島図書館は2016年2月に開館した、福井順子さんの構想に賛同し集まった人たちで運営している私設図書館です。台湾在住の建築家、くもさんこと五十嵐信夫さんが基本設計をし、世界中からボランティアで集った人がDIYによってリノベーションして作り上げた建物です。いまでは男木島を象徴する建物の一つになっています。
 2018年に屋根と2階を改修したのでその事をお話しします。リノベーションした時に手を付けていなかった、屋根の部分の耐久性が限界に達していて雨のたびに雨漏りをする状況となっていました。元の雰囲気がとても良く、

館長となった福井順子さんの強い希望もあり、元の瓦を使い改修することになりました。
 昔の屋根は瓦を粘土で固定していたので、いまの瓦のように釘やビスで固定するための穴がなく、瓦に穴をあける作業などしました。
 内部から見える古くなってボロボロになっていた屋根の材料は可能な限り残しつつ、足し増しする強固な構造としました。その強固な構造を利用して不足気味になっていた棚を屋根から吊って2階の空間を作りました。元は古民家の屋根裏部屋なので広さは無いですが、軽やかな趣(おもむき)のある空間となりました。窓際に机があり、ふと気持ちを切り替えたい時に、背を伸ばすと穏やかな瀬戸内の海が見え、とても気持ちがよいのです。
 今は私自身も男木島島民となり、島の生活を改善する事を日々の生業として過ごしています。
ー2020年5月

屋根裏部屋

屋根裏部屋をリノベーションした心地いい空間

涅槃の座

河西範幸(Noriyuki Kawanishi)/建築家。船の体育館再生の会代表。香川県を中心に様々な建築にかかわる仕事を行っています。代表作は、香川県にて2017年に行われた全国育樹祭での「御席」や四国八十八ヶ所霊場(香川エリア)に設置してあるベンチ「涅槃の座」など。瀬戸内国際芸術祭では男木島を中心にアート作品の制作に深く携わっていました。

他の記事を読む

Copyright (C) IKUNAS. All Rights Reserved.