あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-12 Renovating a home full of memories into a salon.家の記憶を残しつつ、自宅を美容鍼灸サロンに

July 31, 2020

センコー産業株式会社

家をリノベーションしてサロンに

高松市の住宅街に佇む、趣ある和モダンな邸宅が、美容鍼灸サロン「Lune(リュンヌ)」だ。鍼灸の国家資格者である橋本純さんが施術する女性専用サロンで、肩凝りなど身体の調子を整えることはもちろん、女性ならではの美容の悩みも改善してくれると人気。そして、プライベート空間で受けられる施術は、心までときほぐれると、クチコミで訪れる人も。
 もとは2軒だった家を母親の介護を機に、「行き来しやすいように」つなげたという橋本さん宅。
「亡くなった後、母が住んでいた家を使ってあげた方が良いと思って。資格を活かしてサロンにすることにしたんです」と橋本さん。
 設計・施工を担当したのは、高松市のセンコー産業。打合せは2019年の5月からスタートし、相談しながら細部を少しずつ改善し、今年3月に完成した。

サロンの「Lune」のロゴをデザイン。マークは満月と屋島の山をモチーフにしている

店名の「月」にこだわって

手入れされた素敵な純和風の庭園を通って玄関を入ると、奥の扉に橋本さんが自らデザインした屋号のロゴが目に入る。「Lune」とはフランス語で「月」を意味する。
 まず、案内されたのはサロンラウンジ。ソファに座ると、天井近くまである高い窓から、ちょうど屋島の山が頂上まで見えるように計算して作られている。趣味で弾くグランドピアノも雰囲気にピッタリ。実はこの部屋はもともとはキッチンだった場所。シンクを扉で隠す予定だったが、思い切って取り払い、棚を設置した。棚の上には瀬戸内海の色をした庵治ガラスが並び、壁に飾っているのは、作家さんにオーダーメイドで製作してもらった、月がモチーフの作品。そして、ジョージナカシマの作品を扱っている桜製作所のチェアを置く等、地元の良さを感じられる寛ぎの空間に仕上げた。

左:窓の外は庭が眺められる。襖の模様は縁起のいい「宝七宝(たからしっぽう)」柄。人とのご繋がりを大事にしたい、という心から。※サロンのHPは、「Lune屋島」で検索を  右:施工時から照明にはこだわったそう。後から購入したイサムノグチの灯りも寛ぎのポイント

「この場所で過ごす時間が一番好きなんです。お客様にも施術の後にここで薬膳茶を飲んで、くつろいでもらっています」と橋本さん。
 インテリアや外の風景を活かしす白い壁や天井にも橋本さんのこだわりが。
「玄関を入って正面の扉は月白(げっぱく)の色にしてくれたんです。絶妙な色味もとても気に入っています」
 月白とは、月の光を思わせる薄い青みを含んだ白色。白といっても、場所によって、若干色味を変えたところに、繊細なこだわりが伺える。
 施術を行うサロンルームは、より、お客さんが落ち着ける空間であることにこだわった。和風テイストに統一した部屋の窓からは、庭の緑を見ることができ、気持ちを和ませてくれる。しっとりとした空間に香川県ゆかりのイサムノグチの照明が、優しいあかりを灯している。

左:清潔感ある洗面台は、脚と下側の木が緩やかなカーブを描くようにこだわったオーダーメイド。  右:香川県出身のガラス工芸作家の杉山利恵さんの庵治ガラスを展示販売。月モチーフの作品は特別に作ってくれたもの

 一方、洗面コーナーは明るく清潔感が漂うように一新。こだわりの洗面台は、脚と下側の木が緩やかなカーブを描くように作られている。奥には使っていないお風呂をカーテンで目隠しし、生活感は見せない。
 こうしておけばよかったという場所はありますか、と伺うと、
「不満点は一切ないですね。ここにいるととても幸せなんです。施工会社さんには感謝しています」と橋本さんは大満足だとか。丁寧に打合せを行ったことと、こだわりを妥協しなかったからだろう。
 雰囲気はがらりとかわったが、昔から使われていた家具も残されている。庭に植えられている緑の樹々も昔のままで、手入れを続けている。
 施主さんにとって最高にリラックスできる空間は、もちろん、訪れる人にとっても、心を解放できる、寛ぎの空間だ。

ー2020年7月

リノベーション後、ピアノの音がとてもよく響くようになったとか

玄関を入るとすぐにサロンがメイン。奥の建物を住居に使用。現在、ご夫婦と高校生の次女の3人暮らし。2人のお嬢さんのお名前にも「月」が入っているそう

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