あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

file04* Homes that grow with your family家族とともに成長する家

April 24, 2020

三好里香/ドラゴンファクトリー

家族みんなで壁をぬった
暮らすごとに愛おしい空間

藍色のモザイクタイルが貼られたカウンターが印象的なキッチンと、木のぬくもりが感じられるダイニング。各部屋へと繋がる戸を開放すれば、キッチンを中心に一階の部屋を回遊できる間取りが印象的な物件に出会った。
 この家の施主である坂部里奈(さかべりな)さんは、ご主人とお子さん四人の六人家族。中古物件を探していたところ、たまたま6LDKの物件に出会い、直感で決めた。広さも、その理由のひとつだった。

ー新築ではなく、リノベーションに決めた理由は?
 ずっと古民家カフェ風の暮らしに憧れていたんです。インテリアとDIYが大好きなので、いろいろと自分のスタイルにカスタマイズして楽しみたい。

だから新築ではなく、リノベーションすることを前提に中古物件を探しました。

ーリノベーションした場所は?
 古き良きものが好きなので、外観はそのまま残しました。リノベーションしたのは、一階の二部屋とキッチン、リビングダイニング、水回りです。

ーこだわった点はどこですか?
 大好きな古民家カフェ風の雰囲気を出してほしいと、インテリアもインテリアコーディネーターである三好さんに選んでもらいました。みんなの目につく位置に欄間を配置し、古いテイストを残しつつ現代とミックスしたスタイルを希望しました。
 それから、キッチンを家の真ん中に設けて、家事に便利な回遊動線にしました。キッチンの隣の部屋の壁を抜いてもらったので、キッチンに立っていても家族の気配が感じられます。

  • キッチン
  • ダイニング
ダイニング

家の中心に配置されたレトロモダンなキッチン

ーコスト面で工夫したところは?
 DIYが好きなので、できるところはやりたいと事前に伝えておき、壁と床は自分たちで塗りました。下地をプロに塗ってもらっていたので、作業は楽にできました。元々は暗い色だった壁は、白に塗り替えました。そして、床は低価格なコンパネに塗装を施したものを貼りました。塗料も子どもの肌に優しいものを三好さんに選んでいただきました。

ーお子さんたちは普段どの部屋を使っていますか?
 一階の二部屋をホビールームと子ども服の収納に使っています。キッチンを中心に回遊できるようにしているので、家中を走り回っていますけれど……(笑)すぐに子どもに目が届くので安心ですね。

  • 子ども部屋
  • 家族

長い板を渡したデスクは、みんなでシェアするホームライブラリー

ー 他の部屋の使い方は?
 一階は、ホビールームのほか、ストックルーム兼作業スペースに使っています。二階は寝室と洗濯物の部屋干しに使っています。子どもが成長するにつれ、子供部屋にシフトしていく予定です。

子どもたちが成長しても、都度、部屋の使い方やインテリアのレイアウトを変えることができ、フレキシブルに使える。夫婦の趣味であるDIYの腕も活かされるだろう。この家は「家族とともに成長する家」。リノベーションをする時に完璧を求めるのではなく、まだ手を加えられる箇所をあえて残しておく。子どもの成長を見守りながら、家を変化させてゆく予定だ。今後子どもが自分の部屋を持っても、階段や居間を通る度に、必ずキッチンからその気配を感じられる。そんな温もりある家族の暮らし方はこれからも変わらない。

 

ー2020年4月取材

  • 和室
  • リビング
  • バス

左:欄間で仕切られたかつての2間続きの和室は、暮らしの中心になるリビングキッチンに
中:四畳半の畳部屋は、現在ソファーを置いてくつろぎスペースに
右:バス・洗面は、あえて既製品ユニットを使わず、白いタイル貼りのオリジナル。清潔感ある水回り

  • 間取

【 The Renovation! インテリアデザイナー:三好里香 】
まず、家の真ん中に子供四人のママのために、キーステーションとなる対面カウンターのあるキッチンを配置。そこからなるべく死角となる場所がないように、建具を外して、家の中を色んなルートで回遊できるようにする。
ポイントは、何々部屋という固定概念を外し、各自がその時の気分に合わせて、空いている机をパーソナルスペースにするという、フレキシブルな考え方。
いつもお決まりの、リビングのテレビの前を家族が取り合いになるというシーンは、広い一軒家をゲットした意味がなく、自分たちらしい個性的な暮らしのステージアップになっていないと考えている。子供部屋、リビング、ダイニング、書斎……、そんな部屋の名前と使用目的を外してしまえば、そこは、まるで、コワーキングスペースや、シェアハウスと同じパブリックスペース。
家族各自が、家の中にお気に入りスペースがたくさんあって、猫のように季節や気分によってあちこち好きな場所で好きなことをしている、そんなイメージの家。
床は、四畳半スペースのみ本畳を残し、それ以外は全てローコストなコンパネ(ラワンベニア)を、オイル塗装。壁は、土壁の上から漆喰風自然塗料を家族みんなでセルフペイント。自分たちの想いを入れる事を楽しんでもらいました。

三好里香/インテリアデザイナー・空間デザイナー。インテリアセラピースクール、ホームステージングなどを手がける。インテリア雑貨を扱うショップ「ドラゴンファクトリー」オーナー。

IKUNAS vol.11の文学不動産ページには、デザイナー視点で坂部邸を紹介しています

*IKUNAS vol.11*HP*

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