あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-29  The space that changes depending on the times「今」に合わせて変遷する空間

January 08, 2021

西宝町書道教室

柔軟に暮らす

高松市中心部、西宝町の大通りから細道に入ったところに、かつて新聞社の事務所だった築三十六年の建物がある。路地の一角に何気なく佇む鉄骨構造の一戸建ては、堅牢でモダンな佇まい。対して入口は、季節の花木の盆栽と真っ白なのれんが柔らかな雰囲気を醸し、来る人を優しく迎えてくれる。
 今回紹介するのは、「西宝町書道教室」のリノベーション。一階部分を書道教室、二・三階を先生家族の住居にした、教室兼住宅だ。もともと、古いものが持つ味わい深さが好きで、さらに自分の思い描く空間をつくりたかったという中山桜陽先生。当初から中古物件にこだわり、ご主人と教室が開ける住居を探していた。「何軒か見た物件の中で、唯一リノベーションした後のイメージが湧いた物件だった」という理由で、現在の家に決定した。

幼い頃から書道を習い、いつか書道教室を開きたかったという長年の夢。その望みを、この家が後押ししてくれたという。
 室内に入って一際目を引く、上階へと続くらせん状の階段。およそ二十坪の限られたスペースを、最大限に活用するためのアイデアだったという。職人さんが、一階から三階まで丸い穴を開け、鉄製の階段を、その場で溶接したのだとか。
 黒く塗られた壁面には、一面に生徒の作品。スタイリッシュな内装との調和も面白く、ここで書に取り組む人たちの真剣さも伝わってくる。そんな「西宝町書道教室」は昨年、二度目のリノベーションをした。百二十人もの生徒が集まり、少し手狭になっていた教室。駐車場を壊し、新たに教室のスペースを増設した。
「リノベーションは、自分の好きなように空間が使えて、融通が効く。自分の生活スタイルに合っています。いつも身軽で、柔軟でいたいんです」と中山先生。

 世界中が未曾有の事態に陥った二〇二〇年は、「西宝町書道教室」でも従来のように教室を開くことができなかったという。
 しかし、取材に訪れた年の瀬には多くの封筒を抱え、とても忙しそうな中山先生。聞くと、オンラインでもレッスンをスタートさせたのだという。オンラインということもあり、今では県外にも生徒が増えたのだそう。
 それを聞いたとき、これまでのリノベーションストーリーが腑に落ちた気がした。「今」に集中して、空間づくりをするように、自分たちのライフスタイルの変化も恐れてはいない。これからも時に合わせて、柔軟に変化していくのだろう。

ー2021年1月

磁石で作品を展示できるように塗料を四度塗りしてもらったという壁。机は1枚板を使用し、ご主人がDIYしたもの

教室に届いたオンラインレッスンを受ける生徒の作品の数々

西宝町書道教室Instagram

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