あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-22 Gather colors of life 暮らしの色を重ねて

October 16, 2020

嗜好空間

澄みわたる青空が映ったガラスに少し重みのある鉄柵のドア。開けると、そこに広がっていたのは、淡いローズピンクの世界。どこか知らない国に迷いこんだかのような気分になった。白い大理石の床とガラス越しに差す太陽の光が、薄暗い古民家の内部を明るく照らしている。玄関を上がると、その日溜まりのなかで二匹の猫が気持ちよさそうに寝ているのが見えた。
 File.19、21で紹介したMAROCとむれすずめに訪れた際、家屋南側のサンルームのある部屋が気になった。むれすずめのダイニング扉と同じチュニジアのものであろうセラドン色の鉄柵は、驚くほど墨色の外壁と馴染んでいる。そう、今回はMAROCとむれすずめのオーナー川越さんのご自宅のリノベーションについて紹介する。

左:手前のダイニングテーブルでは、仲良くなったむれすずめのゲストさんや友人を呼んで大勢で食事をすることもあるそう
右:ダイニングから見たリビング

モロッコマラケシュの街並みを思い描いたというピンク色の漆喰壁と調和する異国の木製アンティーク家具は、全て川越さんのセンスで厳選されたもの。日本の民家にいるということを忘れてしまうような、不思議な時間が流れる。
 五歳のお子さんがいる川越さんは、自分たちが好きな空間でいることを大切にしているという。そこに居たい、と思える場所は、家族が自然と集まる場所になっているんだとか。
「この家に吹くとても心地よい風と光を最大限に感じる家にしたいと思った」と川越さん。その思いで、梁が剥き出しになった高い天井にはシーリングファン、全方角にはフロートガラスの窓や扉を設置。この開放的なリビングダイニングは、かつて和室とキッチンがある二つの部屋だったが、間の壁を思い切って取り払ったそう。部屋を通り抜ける風と光は、異国情緒漂う空間に、牟礼の自然をそっと感じさせるよう。

左上:イタリアとインドネシアの大理石のタイルは、川越さんが張った
右上:食器棚は、リノベをしてくれた青木さんが営む古民具店「gaouv rabari」で購入したもの
左下:写真奥の机は、近くのお店においてあったチベットのアンティークテーブル。
一目惚れして長年の交渉の末、譲ってもらったそう
右下:ダイニング改装前

 白く塗り替えられた勾配の急な直線階段が、かつての面影を残す。二階の壁には、さらに鮮やかな色を足す※ボ・シャルウィットが飾られている。セーターやカーテンを解いてつくられた、たった一つの色の組み合わせだ。
 街の色、文化の色、ある村の日常の色、様々な色がこの空間に重なる。モロッコや世界各地を旅し、現地の生活を知る川越さんだからこそ一つの空間に集めることができた彩りなのだろう。
 東西に抜ける明るい陽光が、家中をまた鮮やかに照らしはじめた。

※ボ・シャルウィット・・・モロッコベルベル村でつくられる、家のために織られるラグ

ー2020年10月

  • 玄関照明はモロッコのランタン

  • 改装前の玄関

ベルベル村の子どもたちが小麦粉の袋に練習で織ったボ・シャルウィット。家を持ったら、飾ろうと集めていたものだそう。二階の壁や梁の塗装は、家族で行った

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