あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-34 本当の豊かさを知る潔くサスティナブルな島暮らし

April 02, 2021

ダモンテ商会

空き家を活かした島での生活

男木島のダモンテ商会といえば、知る人ぞ知る人気店。今はコロナで通販のみの営業だが、開店時は焼きたてパンや香り高いコーヒーを求めて、ほぼ満席となるほど。
 男木島で暮らす前は住む場所を探して世界一周をしていたという、とてもユニークな経歴の持ち主のダモンテ夫妻に、この島で暮らし始めたきっかけを聞いた。
「たまたま日本に帰国していた時に、瀬戸内国際芸術祭で男木島に立ち寄りました。男木島図書館館長の額賀順子さんに住むところを探していると話したら、『それなら(男木島に)来たらいいのよ』って言われたんです」と、店主で妻の祐子さん。
 その一言に背中を押されるように、一週間後にはまた島へ渡り、家を探すことになったそうだ。男木島が移住者に友好的だったことも決め手となった。

左:明るい色調の木材で外壁をリノベ。ナチュラルで可愛い外観
 右:細い道がはりめぐらされた島内に溶けたように佇む「ダモンテ商会」

現在、店舗として使っているのは、もともと大正時代に納屋として建てられていたもの。昭和に入って幾度かの改築を経て、その後物置になっていたそうだ。
 自分たちでリノベをしようと思ったのは、移住のきっかけとなった男木島図書館がDIYによってリノベしていたから。先住者たちに知恵を借り、時に手伝ってもらいながら、前日はYouTubeで予習、翌日作業、を繰り返したという。
「自分たちの手で作り上げてきたから、建物への愛着はひとしお。DIYしたことで、ひと通りの仕組みを理解してプロセスを学んでいるので、壊れた時は自分たちで直せます」と、夫の海笑さんは言う。
 天窓を付ける時、皆から寒いし雨漏りの原因になるからやめておけと反対されたとか。しかしお二人は胸を張って「壁もそうですが、屋根は特に断熱に力を入れました。天窓の仕組みを理解してつけてあるので雨漏りなんてしません」「たとえ雨漏りしても直せるしね」と笑みを交わす。

店内の様子。お気に入りは海の見える二階の大きな窓。通常海のある西側は風が強いので、あまり窓を作らないのだとか。

 ストーブの火が消えているのにもかかわらず、朝方パンを焼いただけというこの店内は、確かにとても暖かだった。
 空き家は廃屋化すると倒壊の危険にもつながるし、害獣の住処にもなる。また家を壊して更地にしてしまうと、道幅の狭い男木島では、建築基準法により新しく家を建てることができない。現存している空き家を利活用することは、必然でもあったのだとか。
 島暮らしは時に不便なこともあるが、ここ十年ほど移住者が増えてきた。それは先の移住者たちが地盤を整えてくれたことと、それを受け入れて手助けしてくれる島民たちのおかげだったという。 
 何でもすぐに手に入る便利な環境ではないからこそ、自分で考えて調べて学んで、人とのコミュニケーションも築きながら、助けて助けられて一から作り上げる。ダモンテ夫妻のイキイキとした生活を知るにつれ、豊かな暮らしの本質を教えてもらったような気がした。      写真/浜本康宏

ー2021年4月

ダモンテ商会HP

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