file-46 A healing time to spend listening to the sound of the waves潮騒に耳を傾けて過ごす癒やしのひととき
October 15, 2021
Cafe 縁
憧れの場所でオープンしたこだわりのカフェ
三豊市詫間町の荘内半島。紫雲出山(しうでやま)をぐるりと周回する曲がりくねった道を、備讃瀬戸の多島美を愛でながらゆっくりと車を走らせる。自然豊かな海沿いの道をしばらく行くと「箱」と呼ばれる地区に、お目当の『Cafe 縁(えにし)』がある。この変わった地名は、浦島太郎が玉手箱を開けた場所とされる伝承から名付けられたのだとか。
店主の大澤俊美さんと奥様の賀子さんは、この道をドライブするのが好きで、何時の日か荘内半島で自然と過ごせるゆったりとした空間を持てればと思っていたという。
そして、三豊市空家バンク制度とのご縁も有り、たどり着いたのは大正5年に建てられたという、懐かしく趣のあるこの家。
左:Cafe 縁の玄関。木目を活かした雰囲気のある看板
右:長い桁や梁は古民家ならでは
隙間から覗く大きな梁にポテンシャルを感じ、購入を決意したそう。
リノベーションするにあたって、初めは施工会社に依頼も考えたという。しかし、壁一つとっても柱間の広さが違うような古民家特有の造りを活かしながら、細かく設計し調整してもらうのは大変だと感じたと話す。
また、長男の陽介さんが一級建築士の資格を持つ大工だったこともあり、それならいっそ自分たちでとセルフリノベを決意。陽介さんに設計とプランニングをしてもらい、施工方法を教えてもらいながら約二年ほどかけて完成させた。解体しながら、やはりイメージに合わないとプランニングを変更することもあったのだとか。
二年のうち漆喰だけで一年かかったというので、さぞかし大変だっただろうと思ったが、二人は顔を見合わせて「意外と楽しかったね」と笑う。
玄関入ってすぐの土間には、長野から取り寄せたというイエルカワインさんの薪ストーブ
ギャラリースペース。廊下にもお気に入りの雑貨がたくさん並べられている。床の間には賀子さんお手製の玉手箱が
印象的だったのは一階の畳の部屋。他は全て白の漆喰なのに、ここだけはベンガラを混ぜた赤い壁にしたという。
この部屋にはかつて囲炉裏があったため、天井の垂木や梁が煤けて黒光りし、壁の赤とお互いを引き立てて程よい調和を生み出している。
床は拭き漆で仕上げをし、広く拡張された玄関土間には薪ストーブを。煙突はメンテナスが重要なため、後々の事も考慮して設計、材料手配、施工も自身でしたというから驚きだ。
お気に入りの場所を聞くと、二階の海の見える部屋ですと答えてくれた。開放感あるその部屋は、瀬戸の海、島々、時の移ろいを楽しめるようにしている。
陽介さんが、山小屋みたいな窓のない建物にしたいと、わざとこのような造りにしたのだとか。しかし、さすがに夏は虫が入るので網戸を、冬や風の強い日にはアクリル板が入れられるように工夫されている。
一階店内の様子。和紙で窓から入る光を柔らかにスタイリッシュに演出している
こうした二人のこだわりと工夫で、令和元年度から始まった「香川県空き家再生コンテスト」では最優秀賞に輝いた。
挽きたてのコーヒーの香りと心地よい波の音にホッと一息つくと、思っていたよりも時間が過ぎていたことに気がついた。
一人で本を読みに訪れる客もあるというのも納得だ。久しぶりにゆっくりと過ごすことができ、心が満たされた気持ちで帰路についた。
ー2021年10月
左:特注で『縁』と彫ってもらったという、庵治石の石臼コーヒーミル
右上:コーヒーの焙煎体験ができる
右下:たくさんの素敵なカップの中から、自分の気に入ったものを選ばせてくれる
Cafe 縁 080-4037-0824
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