あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-56 Forget the time and relax. A community of smiling faces時間を忘れてのんびりと。笑顔が集うコミュニティー

June 17, 2022

どろんこ亭

廃材を活かした、異世代交流の場

丸亀平野の西側を流れる金倉川は、古くから灌漑用水として地域の田畑を潤してきた。川のおかげで肥沃だったこの一帯には穀物庫が立ち並び、その豊かさの象徴が川の名前になったと言われる。
 丸亀市中津町の、この川沿いにある地域交流施設「どろんこ亭」は、二〇一〇年三月にオープンした。空が広々と見渡せる施設には、川から心地よい風が吹き抜け、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
「『赤ちゃんから高齢者まで誰でも自由に、心ゆくまで楽しい時間が過ごせる場所』がコンセプトです」と話をしてくれたのは、どろんこ亭の発起人「山倉建設」代表取締役の山倉康平さん。
 どろんこ亭という名前には、大人も子どももどろんこになるまで時を忘れて遊び、楽しい時間を過ごして欲しいという想いが込められているという。

左:どろんこ亭外観  
右:どろんこ亭の中にある、誰でも利用できる「仲良し食堂」

左:バーベキューができる外のデッキ。川から涼しい風が吹き抜ける
右:本格的な石窯で、焼くピザはいつも大人気

設立のきっかけは、自分を育んでくれた周りの人たちへの感謝からだった。社会問題である高齢化や少子化、隣人とのコミュニケーションが少なくなり、独居老人が増えている。そんな現状を見渡した時、感謝の方法は個人的にお返しすることだけではないと気づいた。地域に貢献することで、巡り巡ってその人たちが大切にしている家族や友人など、全てをひっくるめて幸せにすることができると考えたという。
 どろんこ亭の施工については、資材置き場を提供し、解体現場で出た廃材の古材や瓦、建具などの使えるものを集め、一年程かけて建てた。施設の中には、「仲良し食堂」を設けた他、かまどや石窯、バーベキューなどが楽しめるスペースや、井戸水を利用した小川もある。二階には暖炉や畳の部屋なども取り入れた。
「皆が安心して過ごせるように、自然素材にこだわり土佐漆喰や柿渋塗料などを使いました。来てくれた人たちが、昔ながらの食事や自然を身近に感じながら、日常の喧騒を忘れてゆっくりのびのびと

左:レンガを積み、セメントで固めたという手作りのかまど
右:手作りの囲炉裏

過ごせる。そんな癒しの空間にしたかったんです」。
 山倉さんの活動は、地域住民や自治体も動かし、今では「おたすけネットワーク」の拠点として、「異世代交流カフェサロン」を開催するなど、さまざまな世代の地域のコミュニケーションを深める場としても活用されている。
 また、どろんこ亭敷地内に同じように廃材を利用してつくられる六月末完成予定の「子育て応援CoCoカフェ 結(YUI)」は、母親たちのコミュニティーの場として、育児の悩みを抱え込まなくていいような子育て応援施設としても展開するという。
 その活動は止まる所を知らない。他にも、讃岐広島の空き家をリノベーションし、子どもたちが島での暮らしを通して自然学習ができる場所にしようと、「ふるさと学校」を立ち上げた。ここでは島民と交流しながら、島での暮らしを通じて子どもたちの自己肯定感を養っていくことが目的。それが人として成長していく過程でとても必要なことと話す。

2階スペース。寺院を解体した際にもらった古材を梁に利用したそう。日当たりの良い和室は山倉さんのお気に入り

「子ども達が生き生きと地域に根付いて育つために必要なのは、人と人とのコミュニケーションが、当たり前のようにいつもそこにあること」
 山倉さんの考える異世代交流の形がそこにある。  

ー2022年6月

左:どろんこ亭に新しくオープンする「子育て応援CoCoカフェ 結(YUI)」の内観。ロフトスペースや、児童書コーナー、カフェ用のキッチンもある
右:「子育て応援CoCoカフェ 結」の外観  

左:併設されているNPOおたすけネットワークの事務所
右:子ども達の遊び小屋「こびとのお家」。職人の方がボランティアで建ててくれたそう

どろんこ亭  HP

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