あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

file-42 An inn where you can enjoy the essence of traditional architecture伝統建築の粋を味わう一棟貸しの宿

August 12, 2021

茶室 吉野屋

自然と触れ合う機会を増やす、農林漁家民宿としての活用

空き家の利活用の一つに、民宿経営を考える方も少なくないだろう。
 観音寺市豊浜町にある『茶室 吉野屋』は農林漁家民宿で開業した、一棟貸しの宿だ。
 農林漁家民宿とは、農山漁村地域の活性と理解促進のために、国や県が支援している農家民宿のこと。緑豊かな農林漁村地域において、自然や文化、人々との交流を通した滞在型の余暇活動を提供できる、宿泊施設となっている。
 平成17年に農山漁村余暇法が改定され、農林漁業者だけでなく、農林漁業体験活動等のサービスを提供でき、法律で定める基準を満たせれば登録できることになった。
『茶室 吉野屋』のオーナー、合田勇三さんは、縁がありこの物件を購入。

左:玄関へ続く石畳。茶室らしい侘び寂びの趣がある
右:正面玄関付近

しかし、一年以上、特に活用することもなく、たまに友達を招いたり、子供たちが友達と泊まりに来るくらいだったそうだ。
 そんな折、農協観光の方から「農林漁家民宿」の話があり、奥様の千佳子さんが県主催の「農林漁家民宿開業支援セミナー」に参加。基準も満たしていたことから、思い切って開業を決意した。
 宿泊業をするには、消防法や旅館業法、建築基準法などたくさんの手続きがあるが、県の担当者が丁寧に教えてくれたので難しくはなかったという。
 また、消防法にかかる消化施設や火災報知器などは、県からの補助金制度でまかなってもらえた。
 宿名に『茶室』とつけたのは、元々この物件が、ある会社の社長が客を接待するために作った茶室だったから。当時で総額3億5千万ほどかけて建てられただけあり、細部のしつらえにもこだわりが見える。

左:玄関隣の大部屋
 右:大部屋前の廊下。突き当たり奥には茶室の水屋

引き戸の取っ手も襖の柄に合わせて設えられている

 中庭には日本庭園があり、それに面して畳敷きの広い廊下がのびる。家のあちこちに伝統的な日本建築の技術がふんだんに取り入れて作られていて、今建てようと思っても、材料だけでなく技術の面でもなかなか揃えられないかもしれない、というのもうなずける。
 これだけの建築物を、ゆっくり楽しめるのも、一棟貸しの宿のメリットだろう。
 たまの休みに、友人や親戚を招待し、日本庭園をゆったり眺めながら団欒するのが楽しみだという合田さん。
 日本建築の粋を集めた茶室に泊まるのもなかなかできない体験なのだが、加えて農業体験では時期が良ければ梨狩りもできるそうだ。
 大野原インターからも近く、一の宮海水浴場や豊浜駅も一キロ圏内でアクセスも良好。きっと充実した余暇活動ができるだろう。

  • ー2021年8月

    左:茶室の駆け込み天井
     右:外から見た茶室の下地窓

      

    広々とした廊下。欄間窓のある掃き出し窓は、簾戸(すど)にしたり、雪見にしたりと、季節に合わせて取り替えられる。

    茶室 吉野屋  090-3460-6523 

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