あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-50 Craftsmanship that have a keen insight into of life暮らしの機微と向き合うものづくり

December 17, 2021

bungalow

つくりたかったのは居心地の良い生活空間

高松市東植田町の公渕公園のほど近くにある『bungalow』は、オーダー家具の店だ。
 周りの風景に馴染むような決して派手ではない外観は、しかしどこか存在感を放っている。風合いのある店舗の扉を開け足を踏み入れると、洗練された佇まいの家具が出迎えてくれる。
 木工家具職人である店主の黒川良太さんは、大学卒業後に就職して貯めたお金で岐阜県高山にある家具職人の学校の門を叩いた。卒業後は香川に戻り、独立して飯山町にある88ステージで工房とテナントを借りて店を出していたこともあったという。 
 程よい田舎で、店舗と作業場、そして住居になる場所があればなお良いと思っていたという黒川さん。一年かけて現在の店舗にたどり着いた。

元が鉄骨の柱と屋根だけだったとは思いつかないオシャレな外観

鉄骨とスレートだけの車庫に、二階建ての倉庫。庭にできそうなスペースもあって、サイズがちょうど良いと思ったのだとか。しかも基礎が鉄骨なので頑丈さも申し分なかった。
 設計デザイン、配線や水回り、店舗を拡張するための鉄骨の柱の追加や屋根などは専門業者にお願いし、店舗と住居の二棟を自分でセルフリノベしたので、2年近くかかったのだとか。
「とにかく自分で家を好きなように作ってみたかったんです」。
 建築家が家具を製作しているように、木の扱いに長けている家具作家が、家を造りたいと思うのも必然かもしれない。
 セルフリノベだからこそできる自由な発想で、好きなものを取り入れた空間づくりは、ものづくりの醍醐味だろう。  
 店舗の床にはアピトン材というトラックの荷台やウッドデッキにも使用される耐久性の高いものを敷いた。

深い色味のシックな店内にはスタイリッシュな家具が並ぶ

  

ベニヤ板に機械で溝をつけ加工したという天井

 かなりの重さを支える耐久性に加え、耐水性もあるのだとか。
 商品の家具に合わせた空間づくりも、工夫のひとつ。天井と床が低くなっている店舗の一角は、そこだけ天井のベニヤに機械でストライプの溝を彫った。凹凸の陰影をつけるだけで、また違った雰囲気になっている。  
 店舗より先に取り掛かったという居住スペースは、一階が作業場になっている倉庫の二階部分。外観からは想像できない、店舗とはまた違った明るい雰囲気に仕上げている。
 壁を設けて寝室と生活空間を二つに分け、高い天井を活かし屋根の形はそのままに、しっかりと断熱を入れたという。暖房には薪ストーブも入れ、大きな窓からは十分に採光ができる。明るく暖かな空間は、家族がゆっくり過ごすための癒される場所になっている。
 こちらは製作した家具を使用して生活しているので、ショールームとして、顧客に見てもらうこともあるのだとか。

左:玄関は、玄関扉と網戸つきの扉の二重構造
右:試しに木で窓枠をつくってみたそう

左:飼い猫のサチコちゃん
右:寝室は青を基調に落ち着いた雰囲気に

 
「ここでは自分の家具を実際に使って経年変化を見ています。デザインだけじゃなくて、使い心地や機能的にも良いものにしたいから」と、穏やかな表情で話す黒川さん。
 セルフリノベしたからこそわかる暮らしの奥深さと、使う人の気持ちに寄り添い得られた気づきが、持ち前のセンスの良さと仕事につながっている。

ー2021年12月

遊具もある家族の笑い声が聞こえてきそうな庭

bungalow HP

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