あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

file03 Smiling House笑う家

September 22, 2019

施工 佐伯工務店

古い物件とは「出会う」ものである。出会いにより家にも住人にも変化が起こる。

今回うかがったのは、丸亀市の家。築100年を超える古民家を昨年の夏に手に入れ、現在時間をかけて修繕中だ。すっかり整ったら、父母と姉妹の4人で甘味処を開く。店の名前は「古家(こや)」に決まっている。
 Oさん家族は古民家を探していたわけではない。甘味処を開くための場所を求めて様々な物件に足を運び、たまたま時代を経た家に出向く事もあったが、これぞというものが見つからないまま1年が経った。あきらめムードが漂い始めた頃、家族で集まってそれでも恒例となっているネットでの物件検索をしていると、堂々たる古い家屋の写真があった。

  • 天井高を生かした空間

  • 生成の麻のれんが涼やか

不動産会社に電話すると、情報は「アップされたてホヤホヤ」だったようで電話の相手が驚いていた。その事に何かの予兆を感じてそのまま見学に行き、家族全員が「出会った」と感じた。

父は、家の前の長い土塀が、母は幼い頃に住んだ実家に似ている事が、姉は立地と価格が高すぎない事が、妹は全体的な佇まいが、好きになった。妹は続ける。
 「古い家具や道具がそのままあり、長年人が住んでいない家独特の湿っぽさや埃っぽさもあったのですが、悪い雰囲気は全くありませんでした。窓を開けると光がさして風が通り、留まっていた時間を自分たちがまた進めるのだと思ったんです」。
 新しい住宅は家族に合わせてつくるものだが、古い家とはまず出会いがある。既に長い年月をその地の自然の中で生き、いくつかの家族の暮らしを抱いてきた家には、「人柄」ならぬ「家柄(本来の意味とは違うが)」のようなものができている。Oさん家族はこの家の家柄が気に入ったのだ。

改修には工務店だけでなく、O家の4人と姉の夫を加えた5人が積極的に参加している。もともと設備関係の仕事をしていた父は、屋根の改修や、隣の納屋を解体してできた古い木を使った据え付けの家具作りなど大活躍である。甘味処のオープンという目標に向けてひとつになり、今までのどの時期よりも心が通い合う時間が流れているという。少々遅れてきた家族の青春かもしれない。
ー2019.7 取材

  • 状態のいい建具もそのまま使う

  • 施工の佐伯さんとOさん

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