あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

file00 Architectural perspective過去から未来を創るリノベーション

August 01, 2019

Y邸{懐深き家}を手掛けた建築家の大野晃貴彦さん(上写真右)と、工務店を営む吉田和照さん(上写真左)が、長年建築に携わり、数多くの現場を見てきた2人が、古民家再生の流儀を語る。

ー リノベーションの現状について教えてください
【大野】全国的に空き家が問題になる中、どんなに素晴らしい家でも、情報が我々に入ってくるのはそのごく一部。持ち主の意に反するような結果になっていることも多く、甦らせたい家と人、経済面や管理のこと、様々な条件が合致した家だけが残っていくという感じだね
【吉田】家には建てた人や住んでいた人の想いがつまっているし、救えるものは何とか救いたいけど、取り壊しになれば使われている木材や、昔の人が切り出してきた価値ある木も廃材になってしまう

ー リノベーション可能かどうか、どう見極めるんですか?
【大野】本当のところ、土台や柱など構造体を見てみないと何ともいえない部分はある。開けてビックリするような宝物が出てくることもあるし、建造物としてどうしても無理と判断をすることも。初めに設計ありきではなく、状態に合わせて設計を変えていくケースもリノベではよくあります
【吉田】私は『住医』のような感覚で、まず家をよく観察する。人間と同じで傷んでいるところがあれば修復していくという感覚かな。古いものはかなり手ごわくて交換しようにも合う材料が見つからなかったり、技術を持つ職人も減ってきているから手間がかかる。我々が匙を投げたら終わりだから、何とか生かす方法を考える
【大野】新築するより遥かに難しいけど、足りない部分は知恵や経験で補っていくのがプロの仕事。ある意味、リノベーションは贅沢な経験でもあるね

【吉田】確かに。現場では先人の知恵や技術に学ぶことも多く本当に面白い。若い職人たちへの技術継承としても貴重な経験だと思う
ー 満足のいくリノベーションのために、心がけることは?
【吉田】なぜその家を生かしたいのか、そこでどんな暮らしをしたいのかを考えること。知識や経験のある職人と、家に愛着を持って管理する環境をつくること
【大野】歴史ある文化に現代の文明を程よくミックスすること。古くても素材がしっかりしていれば、新しいものを吸収してみせる器量があるからね。日本ならではの美というか、着物に洋風な小物を合わせるような感覚でコーディネイトするといい
【吉田】長く愛されてきたものには、今の人が見ても愛される要素が確かにある。我々はそれらを生かしながら、過去から現在、未来を繋いでいく仕事をしないと
【大野】次世代へ住み継がれる家を、一軒でも多く残していきたい
ー2019.2 取材

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