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文学不動産

File-32 Authentic pizzeria in the temple that is unbalanced and enjoyable spaceアンバランスを愉しむ寺の本格ピッツァリア 

March 05, 2021

PIZZA E BAR
TEMPIO

地域に寄り添い400年 
新しい憩いの場所

「寺の境内でピザが食べられる」と聞き、興味を持った。早速、車を走らせ、のどかな田舎道を通って三豊市財田町へと向かう。財田川に並走する道路は、行き交う車も少なく走りやすい。冬だというのに外は汗ばむくらい暖かく、窓を開けると、風に乗って草木の香りがした。
 しばらくドライブを楽しんだ頃、寺が数軒見えてきた。白壁沿いの駐車スペースには、車がひしめき合うようにして停まっている。すべて来店客の車だろうか。地域の隠れた名店。そんな言葉が脳裏によぎる。
『PIZZA E BAR TEMPIO』は、一六二七年から続く浄土真宗の寺、『善教寺』の境内にある。

左 善教寺境内にある店舗。側面のアルファベットが白い壁に映える
右 ガレージの名残のシャッターに、お洒落なペイント。お寺の創建と開店年が書かれている

「この建物はもともとガレージだった場所。ピザ屋を開いたきっかけは、ここの電動シャッターが壊れたからなんです」直すならいっそ店にしようと思いついたと、『善教寺』二十代目のご住職で、店主の香西亨さん。ガレージに立派な瓦屋根が乗っていた事も意外だったが、ピザ屋にしようという発想もまた面白い。
 店内は現しの梁を見せて、狭さを感じさせない開放的な空間に。その梁に合わせて木材でまとめられたカウンターやテーブルは、ガラス張りの間口から差し込む自然光に照らされ、温かな木の風合いを醸し出している。何より、寺の敷地内にあるので、外からの視線を気にせずにくつろげるのが良い。この空間を求めて、自然と人が集まるのも納得がいく。
 ピザ屋にしたのは、周辺がデリバリーピザの宅配エリア外だったことと、本場イタリアまで食べにいくほどピザが好きだったこと。寺=和食という概念を取り払って、意外性のある店にしたかったそう。

左 自然光を受け、木のしつらえが美しい飴色に
中央、右 本格派ピザにお手製のレモン漬けのレモネード

 今はイタリアから輸入した食材でつくられているこちらのピザ。しかし今後は近所の農家さんと食材提携する計画も。日常的に地域の人が出入りする寺の特性を活かし、地産地消の場として機能させることも視野に入れている。
 香西さん曰く「いつでも地域の人が安心して食べたり飲んだりしに来てくれるような、愛される店にしたい」とのこと。組み合わせの妙を楽しみつつ、既成概念にとらわれない新しい試みに取り組んでいる。    写真/浜本康宏

ー2021年03月

左 善教寺の本堂
右 逆立ちをする獅子の装飾瓦が可愛い

庭に大きなユーカリの木が植わっている。これもまた境内の風景としては珍しい

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