あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-31 The manufacturing spirit which is deeply rooted in the historical temple town趣きある門前町に根付くものづくりのスピリッツ

February 12, 2021

藤田金物店

遊びゴコロあふれる空間

三豊市豊中町。四国霊場第七十番札所本山寺のほど近くに、一軒の金物屋がある。今からおよそ百二十年前、本山寺の五重塔が建設される際に、建築道具の手配をしたことから始まったという「藤田金物店」。金物店といっても、取り扱っているのは金物だけではない。道具の販売、ガス屋、近年はリフォーム業など様々な分野で町を支えてきた。
 今回ご紹介するのは、「藤田金物店」の向かいにあるモデルルーム兼ショップだ。そこは、もともと酒屋だった建物で、およそ二十年もの間空き家になっていたという。
 一昨年、近くに飲食店ができたことで人通りが増えた店舗前の道。そこで、気軽に立ち寄ってもらえる場所をつくるために、改装することを決めたのだとか。

「見ているだけでおもしろい店をつくりたかった」と話すのは、四代目の藤田賢治さん。家族代々、金物店を営む藤田さんは、壊れたら自分で修理して、必要であればつくるということが当たり前の環境で育った。そのため幼い頃から、工具はゲームよりもずっと身近で、楽しい遊び道具だったという。ものをつくるということは、日常であり、趣味であり、それが生業となるのも必然だった。
 時代を一気に巻き戻したかのような趣きと、一風変わったインテリアが並ぶ店内。この店の空間も、藤田さんの手づくりだ。
 昔ながらの日本家屋の壁や天井に這う鉄パイプは、電気の配線を隠したもの。パイプの栓を回すと電気がつく仕組みだ。昔から、古いものや部品などを集めることが好きだった藤田さんの趣味がつまったショールーム。そんな遊びゴコロ満載の空間を気に入った人に向けて、オリジナルインテリアやリノベーションの注文も受け付けている。

金物店だからノコギリがあるのではない。すべて藤田さんの長年の骨董品コレクション

 店内に陳列しているのは、キッチン用品やコーヒーグッズ。「まずこの場所に立ち寄り、空間を楽しんでもらいたい」という想いから、店主が厳選したものだ。
 つい最近、ななめ向かいにあるかつて商店だった空き家も購入したという藤田さん。まだ計画段階だが、飲食店をオープンする予定なのだそう。金物店主がつくる小さな町、楽しみだ。 
        写真/浜本康宏

ー2021年2月

インテリアひとつひとつが店内をより味わい深い空間にする

藤田金物店Instagram

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