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File-40 The JR Tadotsu Factory Color the history of modern industry 近代産業の歴史を彩るJR多度津工場

July 30, 2021

明治以降の激動の時代を見守ってきた工場と周辺の街並みを巡るツアーをアキリノ編集部が取材

江戸時代から明治にかけて金毘羅参拝の要港として賑わった多度津。この町の中心部に残る町屋や武家屋敷を散策し、今なお現役で使用されている登録有形文化財、JR多度津工場を見学するツアーに同行した。
 JR四国多度津工場は、JR各社の所管する鉄道工場としては全国で2番目に古く、昭和初期の大規模工場建築が現在も稼働している。ここには7棟の「登録有形文化財」があり、施設の老朽化に伴う大規模設備更新により、2021年9月から随時取り壊しが決定している。惜しむ声もある中、今ある姿を特別公開するツアーをJR四国が企画。2日間で合計50名定員のツアー募集をしてみると、予想以上の反響があり「みなさんがこんなに古い建物に興味があるとは想像していませんでした」と担当者も驚くほど。

左:江戸時代から明治にかけてその時代の面影が残る建物があちらこちらに 
右:100年以上歴史ある銭湯をcaféにリノベした清水温泉

左:多度津が発祥の地である金剛禅総本山少林寺の旧道場
右:なまこ壁や鏝絵(こてえ)が特徴の石川金物店の蔵

鉄道ファンのみならず、歴史ある建築物に関心のある人がJR多度津駅に集合した。
 まず初めに多度津の近代産業の発展に尽くし、「多度津七福神」と呼ばれた豪商の邸宅、「合田邸」のある本通りを散策。黒いなまこ壁や瓦屋根の古民家が点在する街並みを、たどつまち歩きの会の関口さんの案内のもと楽しんだ。「合田邸」は歌人・北原白秋氏や香川県出身の首相・大平正芳氏など各界の著名人が集まっていたそうで、広大な敷地に母屋や洋館、離れなどモダンで豪華な建物は目を見張るほど。
 その後「家中舎」にて昼食。ここは多度津京極藩家老の武家屋敷をリノベーションした施設で、旬の刺身や野菜などを彩りよく丁寧に仕上げられた料理が、参加者の疲れた体を癒してくれた。
 おいしい食事でおなかを満たした後は、「家中舎」の皆さんに見送られ、参加者一同はJR多度津工場に向かった。

母屋や洋館18棟もの建物がある「合田邸」 北原白秋氏が名付け親の大広間「楽々荘」は30畳の大きさがありシャンデリアには家紋が金色の装飾であしらわれている。

武家屋敷をリノベーションした「家中舎」は宴会場「日月」宿泊施設「月光」茶道など文化継承の場「宗武庵」からなる複合施設。ノスタルジックな雰囲気の中、食事を楽しめる。

 工場の敷地に一歩入ると目に入るのは、広大な敷地に建つ無機質で大きな建物。その大きさに圧倒され皆少し緊張した面もちに。いくつかの建物がある中で最も古いものは明治21年に建てられた「職場15号」。木機作業場として建築された現在の場所に移築され、今は倉庫として使用されている。
 最初に案内された食堂「会食所1号」は伊予西条にあった航空機の格納庫を移築したものとされ、戦時中(戦前)の飛行機格納庫としては貴重な軍事関係遺構の一つ。格納庫というだけに他の工場とは違い、かまぼこのような形をした外観が特徴。
 これらの中で特に印象深かったのは「倉庫4号」「倉庫7号」。この建物は多度津工場のランドマークとされていた貨車、客車、機関車の検査修繕施設「職場17号」に隣接して建っており、高さもある大きな建物。昭和11年に建築された「倉庫7号」は鉄骨構造であるのに対し、接続する「倉庫4号」はなんと木材の柱と梁を金具のボルトで締めて建てられたもの。

戦時中は格納庫として使用されていたという施設や、整備中のアンパンマン列車を見学していると、四国の鉄道が刻んできた長い歴史を感じる。

近代化産業遺産にもなっている「倉庫4号」と「倉庫7号」見事に鉄骨造りと木造造りに分かれているのがわかる。

建設されたのは昭和16年で、戦時体制下による物資不足がその背景にあるとされている。しかし、木造といえども鉄骨に劣らない造りで現在も朽ちることもなく、堂々と建つその姿に力強さと迫力さえ感じられた。先人の知恵が詰め込まれたこの建物に、同行していた産業遺産学会の講師の案内にも熱が入り、参加者も熱心に聞き入っていた。
 今回のツアーは、多度津町の良さを再発見し、たどつまち歩きの会や産業遺産学会の皆さんの歴史ある建物を大切に思う気持ちに触れることのできた有意義な一日だった。

ー2021年7月

左:産業遺産学会の講師である市原猛志さんと川島智生さん
右:車両を水平移動させる遷車台(トラバーサー)に参加者を乗せて移動してくれた。線路の継ぎ目を合わすのがとても難しいのだとか。

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