
File-72 A home that changes with your growing family家族の成長に合わせて変化する家
May 16, 2025
マンションリノベ
使う人が心地よい設計を
大通りの喧騒を抜けた先にある閑静な住宅街。駅や学校も近く利便性の高いエリアにあるマンションで暮らす、池田さん一家を訪ねました。
池田設計室を主宰する一級建築士の池田卓也さんが、このマンションをリノベーションしたのは約2年前。築23年のRCマンションの内装75㎡をすべて解体し間取りを刷新しました。
「妻とも相談し、自宅を持つなら息子が幼稚園に通う前に住むエリアを決めたかったこともあり、生まれてすぐに家を探し始めました」
新築であることよりも、エリアや利便性、校区を優先していたこと、また妻の奈都美さんの実家がマンションだったこともあり、マンションに絞って探していました。しかし、新築物件はどれを見てもピンとこなかったという卓也さん。
「間取りが一般的で、当然オプションをつけるほど費用も割高に。デザインにも魅力を感じなかったので、リノベーションをする前提で中古物件を探すことにしたんです」。それから3年ほど経ち、今のマンションに出会いました。
リノベーションを施した住まいは、玄関からまっすぐ伸びた廊下の先に、明るい日が差すリビングが広がります。左には広いセパレートキッチンがあり、その反対側には壁で間取りを変えられる寝室兼収納スペースが。キッチン、テーブル、収納家具などのインテリアは、生活スタイルに合わせてすべてオリジナル。白とグレーで統一され、無駄のないすっきりとした室内は、池田設計室の「ちょうどいいシンプルな建築」を体現しているかのようです。
設計するにあたり卓也さんは、奈都美さんの暮らし方を観察したそう。家事の進め方や動き方を見て、不便を解消してあげたいと考え、できたのがこのセパレートキッチンでした。

ヨーロッパの樹脂製の材料を使った一枚板のテーブル。汚れが目立たず、染みになっても味がでる素材で作ったオリジナル
キッチンとテーブルは一枚にし、最小限の動きで料理ができるように。また、奈都美さんの身長に合わせてテーブルを低くしたり、食洗機と向かいの棚を引き出した時にぶつからずに片付けることができるなど、料理が好きな奈都美さんが使いやすい工夫が詰め込まれています。ミリ単位で設計したため、その緻密さゆえに冷蔵庫が通らず苦労したほどだったとか。
時の流れに合わせて間取りを変える
キッチンだけではなく子ども用のステップやウォーターサーバー、冷蔵庫などの置き位置まで決めて設計したことで、日々の家事効率が格段にアップ。またダクトや電気配線を棚の中にしまって、できるだけ天井を広くするなど、マンションならではの工夫も散りばめられていました。
左:ダクトなどを隠しつつ、飾り棚としても使える工夫を
右:このマンションを選んだ理由の一つである開放的な一枚ガラス窓。木製の枠組みで穏やかな印象に
さらに奥の寝室兼収納スペースは、壁を動かし、可変できる間取りに。
「年齢を重ねる中で、暮らし方を変えられるような仕組みを作りたかったんです」と卓也さん。幼稚園に通う息子さんの成長に合わせて、仕切りを移動させて部屋を作る予定なのだとか。
「マンションをリノベーションして暮らすことは、自分たちの生活に合っていたと思います。新築や一戸建てにこだわらなくなっただけで、意外にも選択肢が広がりました。かかるはずだった費用を室内の設えにかけることができたので、より家族が暮らしやすい家になったと思います」と振り返ります。将来はマンションを手放し、郊外に一戸建てを購入するなど、さらなる展望も広がっているそうです。
ー2024年8月

使ったことのない素材を試したかったという卓也さん。セメントの板と積層しているベニヤ板を合わせた素材を、家具で使うフラッシュ構造で備えつけた。この壁を基準に色味などを決めたそう
左:間取りを変えられるスペース。今は仕切りをつけず、開放的に使用
右:一枚一枚剥がせるタイルカーペット。掃除も簡単
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