あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

file-38 A rural bakery where gentle time flows優しい時間が流れる片田舎のベーカリー

June 11, 2021

ベーカリー flag

店主の思いがカタチになった場所

「バイバイ。また来るね」。
 小さな女の子がヤギに手を振りながら、母親に促されて車に乗り込んでいる。
 ここは牟礼町大町にある、『ベーカリーフラッグ』。国道十一号線から少し南に入った田園風景広がる場所にあるパン屋だ。正直、ナビと立て看板がなかったら迷子になっていたかもしれない。
 駐車場から店まで続く小道には、うさぎ小屋があったり子ヤギが繋がれていたり。頭上には電球がぶら下がっていて、どこか懐かしいワクワクするような雰囲気に、思わず笑みがこぼれる。
 緑に覆われた店の入口に着くと、「いらっしゃい」と明るい大きな声が飛んで来た。声の主は店主の大塩隆司さん。奥様の克枝さんと二人で、二〇一七年九月からこの場所でパン屋を営んでいる。

緑に癒される、店舗入口

以前は志度で店舗を借りてパン屋を営んでいたという。商売も軌道に乗ってきたので、広い土地で動物を飼いながら住居も兼ねた店にしようと物件を探したそう。
 高松市の空き家バンクを活用し、時間をかけてようやく築七〇年を超えるこの古民家を見つけた。敷地面積は二四〇坪。やりたいことが十分に叶う希望通りの物件との出会いだった。
 施工を請け負ってくれたのは、もともとはパンを買いに来てくれていたお客さん。職人らしいその手を見て、思わず職業を尋ねたのだという。
「大工だというので、『じゃあ家建てる時はお願いね』って」 
 話を聞いていると、大塩さんの人懐っこい性格がよくわかる。取材の間も、来る客は昔からの常連さんだったり新規のお客だったりと様々だったが、自然とワイワイ話が弾む。こんな調子で大工さんに色々教えてもらいながら、壁に漆喰を塗ったり、自分でできるところは一緒に改修したのだとか。

左:格好良いデザインの石彫刻の看板
右:ガラスケースの中にはおいしそうなパンがずらり

 リノベーションで特に気をつけた所は、一階が仏間になっていた部屋の二階部分。「天井高が他よりも低くなっていたので、二階の天井を抜いて欲しいとお願いしました。そしたら大工さんが『二階の天井ないと、夏は暑いよ』と言うから、じゃあなんとかしてよって。屋根部分の断熱には、めっちゃ頑張ってもらいました」と、屈託のない口調で話す。
 購入した時は、現在店舗にしている母屋の東側に、鉄骨造の建て増し部分があったそう。でもせっかくの古民家の雰囲気を守りたくて、壊してもらったという。今は物置や鶏小屋が置かれている。
 飼育している動物は、ヤギ、ウサギ、鶏、烏骨鶏などなど。
時間があれば動物の小屋を作ったり、畑の世話をしたり。庭の池や駐車場もお手製。
 素材の良いおいしいパン作りだけではなく、動植物を育てたり、物作りをするのが好きなのがよくわかる。 

左:ウサギ小屋が手狭になってきたので、現在作成中なのだとか
右:生後6カ月の子ヤギも

のびのびとした自然豊かな環境で、動物たちと触れ合えるパン屋さん。その確かな味とロケーション、店主大塩さんの大らかな人柄に癒されたくて、この優しい古民家に今日もまた、多くの人が訪れている。

ー2021年6月

ベーカリー flag 087-880-0590

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