あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-67 A home that is carefully nurtured like a child我が子のように大切に育てる住まい

July 07, 2023

古育庵

プロと二人三脚。家に命を吹き込むリノベーション

弘法大師空海が七つの宝を埋めたという伝説から名付けられた、香川l県三豊市にある七宝山。そのなだらかに伸びる東斜面の裾野に、「古育庵(こそだてあん)」と名付けられた古民家がある。
 外壁の漆喰と杉板の装いが、レトロな雰囲気を醸し出しているその家は、母屋が築七十年、その隣は築六十年といった具合に、それぞれ築年数が違う三棟の平屋が中庭を囲むようにコの字に軒を連ねる。
「古民家をリノベーションして住むのが夢だったんです。五年ほどかけて、ようやく希望にあったこの古民家を見つけました。できる所は自分たちで修繕したかったので、すべておまかせするのではなくて、一緒に施工してくれる会社を探していました」

古育庵の外観。右からしわく堂の入谷さん、髙木さんご家族

左:一目見て気に入ったという、玄関の丸窓。壁の漆喰の色味は何度もテストし、すべて自分たちで塗ったという
右:土間は奥様の憧れだった黒モルタル仕上げ

そう話してくれたのは、古育庵で暮らす髙木夫妻。二人が、たどり着いたのが「暮らしづくりカンパニーしわく堂」だった。
 家をセルフリノベするためには、屋根や床、壁、天井の状態やライフラインなど、安心して住むために必要な事がたくさんある。
 しわく堂が主に手伝ったのは、そういった専門的な工事に加え、材料選びやその入手方法、使う道具選び、施工方法といったプロの知識が必要な部分。それらをレクチャーすることで、住む人が将来的に自分たちの手で家の修繕をしたり、暮らしや家族の形によってカスタマイズすることができる。
 最初にどこまでDIYをするかを話し合い、夫妻の意向をできるだけ叶えるため、とりあえず試しにやってみて、できなかった部分はプロにお任せする事にした。
 DIY経験の豊富なご夫婦が、さらにプロに手取り足取り教えてもらったことで、一生ものの技を身につけることができたと、満足そうに笑う。

キッチンのタイルは大好きな色で統一。
貼る場所を入谷さんが鉛筆で線を引き、接着剤の塗り方や目地詰めなどもレクチャーしてもらった

廊下から覗いた、洗面所と廊下の突き当たりにあるトイレ。扉や、部屋の壁紙には草花や樹木をモチーフにした柄を用いてアクセントにしている

「素材がいいものを使いたかったので、材料はタイル一枚から、壁の色、すべて自分たちで決めたかったんです。しわく堂さんのおかげで、やりたい事は全部叶えられました。DIYのポテンシャルも上がったので、リビングの扉や寝室の窓とか、住み始めて作ったところもあります」
 施工を始めた当時は、第一子の育休中だったという奥様。ここは夫妻にとって、子どもをこれから育てていく大切な家だ。
「古育庵」の名付け親でもあるしわく堂の入谷さんは言う。
「家も子育てと同じだと思うんです。十年、二十年と子どものように大切に育てていって欲しいと願いを込めました」
 宝といえば、人によってさまざまだろうが、子に過ぎたる宝なしともいう。命をつないでいく、将来が楽しみな住まいだ。

ー2023年7月

ボロボロだった外壁も、下地を敷き杉板を貼り漆喰で塗装し直す事で、味わい深く生まれ変わる

二人のお気に入りは何と言ってもリビング。天井に沿う梁の木組みを邪魔しない照明や緑のタイルなど、お気に入りをたくさん集めた。ダイニングテーブルは楡の一枚板。旦那様が電動サンダーで表面を削り、足を取り付けて作ったものだ

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