あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-68 Disseminating the charm of the Gmyou五名の魅力を発信する

March 08, 2024

飯村邸

旅から学んだ、暮らしの楽しみ方

香川県東かがわ市に「五名(ごみょう)」と呼ばれる地区がある。阿讃山脈の恵みを受けた豊かな森林のおかけで、野生動物も多く生息する。自然に囲まれた長閑で美しい場所だ。
 旧五名小・中学校跡地を利用して、二〇一九年七月にオープンした「産直カフェ 五名ふるさとの家」は、ジビエや農産物の料理の提供だけでなく、地域の人たちの憩いの場所であり、五名の特産物の販売や情報を発信するアンテナショップとしても愛されている。
 店主は北海道から移住してきたという、飯村大吾さん。二十一歳の時、結婚を期に四年ほどかけて、みかんの収穫やサトウキビの収穫など農家の手伝いをしながら、北から南まで日本全国をヒッチハイクで旅をしたという異色の経歴を持つ。

産直カフェ 五名ふるさとの家。朝からモーニングを食べる地元の人たちで賑わっている

左:薪や炭の自販機。とてもリーズナブルで、キャンプやバーベキューにも重宝されている
右:ジビエとして食べるだけでなく、鹿の皮を使った手袋や、イノシシの油で作った革オイルなど、
余すことなく活用する取り組みもしている

「五名に移住したのは今から八年ほど前になります。五名の仕事というのは、農林業が大半です。栗や自然薯、薪作りや椎茸の原木の出荷、炭焼きとか。ジビエにも力を入れていて、平成十七年からジビエの解体処理施設が整備され、『食肉処理業』や『食肉販売業』などの認証も取っているので、安心して提供ができるんです」。
 移住をするきっかけになったのは、香川県で旅をしていた時に知り合った五名の方達から声をかけてもらったこと。そこで林業研修生という制度を利用し、旅をしていた時から住みたいと思っていた家も貸してもらえることができたという。
 案内されたその家は、四年ほど前にTV番組『ポツンと一軒家』で紹介されたこともあるだけあって、民家を離れ、細い山道をしばらく登った先にあった。森林の切れ目の谷間に、陽の光をスポットライトのように浴びる二階建ての古民家。

左:『ポツンと一軒家』で紹介された家屋。今は枯れてしまったが、家の周囲には水田があったのだとか
右:家屋の近くにある炭焼き小屋

五名ふるさとの家をオープンさせた後、山林や田畑含め七千坪の土地の管理が大変で、居を別に移していたが、昨年大家さんからこの家を買わないかと言われ、購入を決意した。それというのも、来た人が存分に五名を満喫するための宿泊施設の必要性を感じたことから。
「ここを農家民宿にする予定です。改修は、五名の大工さんや職人さんたちと一緒に、ここの杉を自分たちで切って製材して。その土地にあるもので、昔ながらの家づくりがしたい。例えば焼杉のワークショップを開いて、壁を焼杉にするとか、宿泊体験ではジビエのソーセージ作りや炭火を使ったワークショップだったり。地元の方だけじゃなく他の地域の人にも協力してもらって、五名の良さを活かし地域が活性化する仕組みづくりをしていきたいと思っています」。

室内の様子

 改装後の間取り図には、南に開いた窓から入る光を利用するために、階段を潰し吹抜けにした開放的なリビング。対面でお客さんと話ができるよう、台所はアイルランドキッチン。東に建つ納屋は山の図書館にしたいのだと話す飯村さんの瞳はやる気に満ちている。
「以前旅先でお世話になった沖縄県西表島の農家民宿では、ブヒブヒいってる猪を生け捕りにしてきたのを調理して、宿泊客に提供するんです。魚を釣ってきて、そこの畑で育てたウコンとかジャガイモとか、島にある食材だけで料理して。そうやって食卓囲ってお客さんと過ごすという店主のスタイルが、凄く僕の中でしっくりきて。それが、今の自分につながってきていると思います」 
 飯村さんが目指すのは、五名のあるがままの自然を感じてもらえる宿だ。着工は八月。二〇二五年の四月一日から営業を開始する予定だそう。 

改装後の設計図。見ているだけでもワクワクが伝わってくる

 すでに頭の中では、里山暮らしの様々な体験ができる施設としての構想が、着々と形になっているようだ。今後の進展を、ぜひこれからもアキリノを介して発信していく予定だ。

ー2024年3月

図書館になる予定の納屋の片付けも着々と進んでいる

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