あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-35 Handing down 130 years of history from father to son父から息子へ 百三十年の歴史をつなぐ

April 26, 2021

施工 佐伯工務店

趣を残し、機能性を持たせる

U邸があるのは、香川県高松市の港町。晴れた日には、瀬戸内海に浮かぶ島々がはっきりと見え、鳥のさえずりがどこからともなく聴こえてくるのどかな場所だ。
 今回ご紹介するU邸は、母屋に隣接した築百三十年の家屋。母屋を建ててから二十七年間、誰も住んでいなかったという建物は、リノベーションを機に父から息子へと受け継がれた。聞けば、Uさんで五代目になるという。
 長年、家族全員その家屋を活かしたいという想いがあり、リノベーションの計画は以前から話し合われていた。そして、今回その想いを引き継ぎ、実行したのがUさんだった。
 中に入ると、木のやさしい香りに包まれ、不思議とぬくもりを感じる。

「ここには囲炉裏があってね、みんなで囲って食事をしていました」とUさんの父は顔をほころばせた。家屋は、住まいとしては使われていなかったものの、家族や友人が集まり、団欒する場所だったという。
 間取りは全く変えておらず、よく見ると、キッチンには床柱があり、床の間だった場所には、冷蔵庫がすっぽりと納まっている。
 天井の一部をガラスにした居間からは、二階の梁を見ることができる。長年家を支えてきたその佇まいは、ガラス越しにも関わらず荘厳で美しい。居間を吹き抜けにしなかったのは、埃と寒さ対策という機能面での理由があったという。
「途中での変更も、佐伯さんはいつも快く応じてくれました」。改修を担当した佐伯工務店とは、数年前に屋根の補修工事で出会った。Uさんにとって、変更や予算の相談にも親身になってくれたことは、とても心強かったという。

左:居間の天井。 中央:ダイニング横の座敷。こちらの座敷の床の間や違い棚は当時のまま
右:ダイニングと座敷の間にある欄間。組手の繊細な紋様が空間のアクセントになっている

 最後に、家の外へと案内してくれた。U邸と母屋の間には、Uさんの父の趣味部屋があり、そこには壁一面に大工道具や木材がずらり。U邸のフェンスやデッキ、ダイニングテーブルは、Uさんの父のDIYだという。その完成度の高さに驚くと同時に、息子により快適な空間をという父の優しさを感じる。
 家族の想いが繋がり実現したU邸のリノベーション。百三十年の歴史や思い出がつまった家は、この先もずっと、何気ない家族の日常を見守っていく。

ー2021年4月

左:勾配が急な昔ながらの階段。Uさんの父がDIYで補強したという 
右:Uさんの父の趣味部屋。「職人が作業するのと同じくらいの時間、お父様もずっと作業されていました」と佐伯さん

U邸の梁。当初は、屋根まで板を張る予定だったが、Uさんの要望で、構造を見せるために、そのままの状態で残した

佐伯工務店HP

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