あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-51 A calming nostalgic inn心落ち着くノスタルジックな宿

December 24, 2021

民泊 對馬

想いを受け継ぎ残した屋敷

  

香川県さぬき市の志度湾に面して建立され、四国八十八箇所霊場第八十六番札所である志度寺。その手前、昔ながらの街並みが残る讃岐街道沿いにある民泊「對馬」。
 丸い看板に「對馬」と書かれている屋号はこの家のかつての持ち主の名前をそのまま引き継いだ。元々は普通の民家だったので外観は街の風景になじんでいる。
 屋内には「千鳥の間」「兎の間」「猫の間」の3室あり、以前は国内だけでなくさまざまな国の観光客が「對馬」で出会い、交流の場として賑わっていた。コロナ禍の現在は1棟貸しの宿として利用されている。
 「この家は義伯母の嫁ぎ先だったんですよ。」と宿の管理をしているKさんが案内しながら教えてくれた。

左:通り沿いに建つ白い塀に丸い看板「對馬」が目印
右:南側に建つ離れの玄関口

跡を継ぐ人がおらず、義伯母亡きあと住み手をなくした屋敷はあき家となった。当初は家を解体して土地を売却する計画もあったという。「先祖代々受け継いでいたこの家を守っていくのが私の務め」と病に伏しても家の行く末を案じていた義伯母の姿を側でみてきたKさん。その想いを継ぎ民泊という形でこの家を残した。
 ずっと住んでいたとはいえ年月を重ね、床など傷みがひどいところが随所にあった。また、民泊を営む上で解体が必要な箇所もあり改修工事を要したが、「屋敷を残すと決めてからは、あっという間だった」とKさんは当時を振り返る。
 そうして民泊宿として生まれ変わった「對馬」。宿の予約は県外に住む娘さんが主にAirbnbで管理し、清掃は近くに住むスタッフが行う。Kさんは主に隣に併設しているコインランドリーの管理をしながら、運営を手伝っている。「皆の協力がなければこの宿は続けられなかった。近隣の人たちにもずいぶん助けられています」と話す。

左:ひょうたんのライトが可愛らしい共有スペース
   右上 右下:飾られている古い写真レコード盤からは当時の生活が垣間見られる

 義伯母が大切に使ってきた家具や調度品はできるだけそのまま残した。そのせいか、昭和レトロな空間を持つこの家に一歩に入ると、子どもの頃にタイムスリップしたかのような懐かしい感覚に。
 「若い人には逆に新鮮みたいね」と古い写真やドーナツ盤のレコードを指して微笑むKさん。ノスタルジーな雰囲気を持つ宿とこの宿を見守る人の温かさを慕って、リピーターも多いと言われるのも納得できる。訪れる人を優しく迎えて癒してくれる宿に出会った。

  • ー2021年12月

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    左:二間続きの和室がある「千鳥の間」。帰省した家族が利用することも多いそう
     右:ポップな外壁のコインランドリー。倉庫を改修し併設した。近隣の人にもよく利用されている

    對馬 070-2343-1021

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