あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

パートナーインタビュー

パートナーインタビュー

人々の日常に寄り添う「暮らしづくりカンパニー」

しわく堂

三豊市豊中町にある建築事務所「しわく堂」。
納屋をリノベーションしたオフィスを拠点に、代表取締役の関大樹さんと取締役の平宅正人さん、入谷洋平さんが2018年に創業しました。建築事務所といいつつ、ブランディングからグラフィックデザインまで、その事業内容は多岐にわたります。
実はこの3名、それぞれ高校や大学の同級生なのだとか。以前は、東京や大阪など違う地域で建築業に従事していましたが、住宅やインテリア、建物をつくるのではなく、その人に合った暮らし方そのものを提案する「暮らしづくりカンパニー」をつくりたいという共通の思いがあり、地元の香川で結成してスタートしたのが、しわく堂です。

左から関大樹さん、平宅正人さんと入谷洋平さん。とても気さくな方々です

さっそく、しわく堂の取り組みについて、クリエイティブディレクターを務める平宅さんにお話を伺いました。「古い建物を残していくためには、ただ補修や改修をしただけではだめだと思うんです。建物の新たな価値を見出さないといけない。そのためには、どんなデザインであるべきかを利用する人たちにとっての『あったらいいな』に着目して考えることが大切だと思います。」文化財などの歴史的建造物の補修にも携わってきた経験の中で、企画することの必要性を特に感じたそうです。

まだまだ新築志向が強い香川県で、リノベーションにも力を入れているしわく堂。「リノベーションは新築と違って、想像しづらいんです。どういう風に変化するのかわかりにくい。だから、まず自分たちで実績をつくっていかないといけない」その言葉通り、創業からこの2年の間に、既に数々の空き家利活用の企画、設計やリノベーションを行ってきました。

1つめは、しわく堂のオフィスに隣接した「おむすび座」です。「寝転がれるお座敷ビュッフェ」を目指し、もともと空き家物件だった建物を、子育て世代が抱える現代の問題に着目してリノベーション。地域の人たちの暮らしに寄り添う場として開放しました。取材時はちょうどお昼の時間帯だったこともあり、おむすび座は地域の子育て世代で賑わっていました。建築物という箱だけではなく、誰に届けたいか、地域の人達が何を必要としているかを的確に捉えていることが伝わってきます。

築およそ70年の母屋をリノベーション。「地域ぐるみの子育て共助環境をつくる」ことをミッションにしたおむすび座。小さいお子さま連れにも嬉しい座敷になっている

2つめは、2019年に愛媛県松山市の三津浜にオープンしたゲストハウス「Mittan(ミッタン)」。三津浜の町を気に入った東京でCMなどの動画プロデューサーをされているオーナーから、「購入した空き家を使ってゲストハウスをしたい」と相談があったのだとか。しかし住宅が立て込んだ場所にあるため、宿泊施設をする場合は地域の人にも喜んで迎えてもらう必要がありました。そこで地域利用もできる一日一組限定の一棟貸しのゲストハウスを提案して始まったプロジェクトです。

Mittan エントランス

今回特別に、泊まれる町の応接間と題した「Mittan」の企画書を見せてもらいました。そこに記されていたのは、設計案ではなく、運営方針やターゲティング、オープン後の収益方法。「その町で体感するもの、どんな人がやってくるのか。店舗や施設の設計をするきは、マーケティングから行い、建物の道しるべをつくってあげることに重きを置いています」とのこと。なぜなら完成した後が、その建物の価値が試されるときだから、だそうです。

Mittan リビング

「Ku;bel(クーベル)」、「Co.en(コウエン)」「絶景劇場」。これらは、しわく堂が手がけた物件の名前。そのキャッチーな名前をつけることにも、ちゃんと意味があります。「ネーミングは本当に難しいですが、企画段階で名前を付けてあげることで、オーナーの方も職人さん達も、制作段階からプロジェクト自体に愛着を持ってくれる。関わる人達が気持ちを一つにすることはとても大切で、それがオープン後の運営をうまくすすめることに繋がるんです」と平宅さん。

柔軟な企画力の根底には、お客様に対する思いはもちろん、クリエイティブの力で建物の価値を最大限に引き出したいという熱い想いがありました。

 

Interview 2020.11.13

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