あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

パートナーインタビュー

パートナーインタビュー

業種の枠を越えたユニークな発想。 原動力はお客様と地域への強い想い

クラウド

現在、香川県内のあき家の数は、約8万8千戸(総務省「住宅・土地統計調査」2018年10月1日時点)。これは、全国でも8番目に多い数で、年々増加し続けています。

放置され管理されなくなったあき家は、建物の劣化により災害時の危険性が高まるなど、さまざまな点で問題視されています。しかし、「引き継いだ家をどうするのか」「誰に相談すれば良いのか」と悩む人は、今後さらに増えると予想されているのです。

「そんな人たちの力になりたい」と香川県のあき家問題に真剣に取り組んでいる会社があります。それが高松市林町、高松中央インターのすぐ南にある解体工事業「株式会社クラウド」。香川県が組織する空き家利活用サポートチームの登録メンバーでもあります。

クラウド社屋。入口ではガンダムのプラモデルがお出迎え

鮮やかな色調のタイルが施されたカウンターと、明るい日差しが入る開放的で親しみやすい雰囲気の打合せスペース

今回お話を伺ったのは、代表取締役の三好和則さん。三好さんは、20代の頃から解体業を営む会社で勤務しており、重機を扱うおもしろさや解体工事のやりがいを感じ、1996年に独立。解体業を専門に行う会社としてクラウドを立ち上げました。

設立後しばらくは、仕事の大半がゼネコン系の下請け工事。大きな仕事にやりがいを感じると同時に、お客様自身の声を直接聞き、自らもっと寄り添った上で工事を行いたいと思うようになったそうです。

クラウドが愛用している重機の一つPC35MRミニモク。胴体は小さいが腕が長く、木造解体工事に適している。SNSでは重機の特徴についても紹介している

転機となったのは、あき家問題に注目し始めた10年ほど前のこと。引き継いだ家をどうしたらいいのかわからず、悩んでいる人が多くいることに気が付きました。以降、「気軽に相談できるようにしたい」と香川県内の解体業者で初めてフリーダイアルを開設。一般の方から直接相談を受け、見積から解体工事までを一環して請け負うようになりました。必要に応じて補助金申請の無料代行も行っており、より充実したサポートをするために、専門的な知識や最新情報に常にアンテナを張っているそうです。

「解体業者だけど、ただ『壊しましょう』というのは無責任だと思うんですよね。壊すにあたって悩んでいること、手続きなどのわかりづらい手順、そもそもなぜ壊すのか、一つひとつ一緒に理解していく必要があります」。

解体工事をする上で、クラウドが大切にしている2つのことがあります。それは、お客様とのコミュニケーションと施工記録。解体工事を行うにあたり、音や埃の発生は避けることができません。そのため、お客様はもちろん近隣住民にも何度も話をした上で、納得してもらってから工事を進めるようにしているといいます。

また、現場では解体前から解体完了までの様子を撮影し、アルバムにしたものをお客様にプレゼントしているそうです。「壊すと決めた建物にも、長年の家族の思い出がつまっているはずです。家の記録を形にして残すことで、その家での記憶は引き継がれていきます」と三好さん。

お客様に渡している施工記録アルバム。写真だけでなく、工程を説明する文章も添えられている

最近は、「解体工事についてもっと知ってほしい」と施工のタイムラプスをSNSで発信しています。解体工事は、大きな重機で建物を壊していきますが、実はとても繊細な作業。家屋内の造作物を取り外し、素材ごとに分別するのに1か月もの時間を要します。

築100年の木造藁葺きの建物の解体の様子

また、解体前の家屋には膨大な家財や遺品が残されている場合がほとんど。なかには、まだ現役で使えるものや貴重なものも多くあるといいます。しかしながら、解体業者が不用品の整理を引き受けると「処分」する以外の方法がありません。そこで、三好さんは2018年に遺品整理や不用品の改修を行う「クラウドステップ」を設立。回収したものは、骨董品鑑定士やリサイクルショップ、金属再利用工場に引き渡し、できる限り処分ではなくリサイクルやリユースを行っています。

業種の枠を越えて、依頼主のために解体工事を行うクラウド。2022年1月26日にはお弁当を取り扱う「クラウドキッチン」という新たな挑戦を始めました。きっかけは、コロナ禍で知り合いの飲食店経営者が頭を抱えていたこと。弁当のテイクアウトという形でいろんな店の料理が選べるお弁当屋があれば、訪れた人が喜んでくれるだけでなく、飲食店オーナーにとっても少しの助けになるのではと思いついたそうです。

連日完売になるお弁当。日によってお弁当の種類が異なる。詳しくは、クラウドのSNSをチェック

また、どうしても荒っぽいイメージを持つ人が多い解体業。それは、江戸時代に火災が発生した際に、燃え移りそうな建物を消防団が壊していたことから現代の解体業という仕事が生まれたからだと三好さんは教えてくれました。このイメージを少しでも柔らかくして、本当に困っている人が気軽に相談できるようにしたいという考えとも一致しました。

クラウドキッチン店内。店のデザインは三好さんのアイデアで、遊びゴコロがありながらも落ち着いたぬくもりのある空間になっている

「これまで積み上げてきた得意な分野で企業同士協力し合えば、必ず良い循環が生まれます」。解体業という枠を越え、地域で一緒に事業をする仲間とともにお客様のために動く三好さんの熱い思いを伺うことができました。

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