パートナーインタビュー
伝統ある畳の世界。勉強しても 8合目まで到着できるかどうか
山下畳商店
訪れた時、まさに作業中だったにも関わらず笑顔で対応してくれたのが、古式畳の製造メーカー山下畳商店、代表取締役社長の山下明宏さん。創業は昭和28年、高松市国分寺町で3代続く地元の畳屋さんです。
「10人兄弟に生まれた祖父は、手に職をつけるために、大阪で2年、香川県に戻って3年、畳職人の修行をしました。腕に自信があった祖父は20歳の時、地元で畳店を創業しました」
「まずは近所の人の受注から始めましたが、その時代は畳店も多かったので、営業にいろいろ工夫を凝らしていたみたいですね。当時、店舗のすぐ側に映画館があったので、店の前を通行する人が多かったんです。祖父は皆が映画を観終わって帰る時間に合わせて電気をつけて仕事をし、この畳店は夜遅くまで忙しいんだなと思わせたりしていました」
昭和30年代~40年代は住宅の建築ラッシュの時代。そのため畳の需要も多かったといいます。
「2代目である父親(現会長)の時代には、畳だけでなく、襖(ふすま)や、内装、室内のリフォームを請け負うようになりました。その頃から畳と一緒に壁、襖なども明るく今風にするなど、空間ごとイメージを変えるご提案をしています。最近ではクラシックな畳も人気ですよ」
山下畳商店は、畳・襖・障子・クロス・アミ戸・建具・左官・大工仕事までトータルで任せられる体制を整えています。
「畳は、原材料の品種、産地によってその特徴が異なります。一日中居る部屋には丈夫な畳を、普段使わない部屋には見栄えを重視した畳がおすすめ。またマンションなどコンクリートの上に藁(わら)を敷き詰めると湿気が逃げにくいので、建物に合う適切な畳をご提案します。藁の量、足当たりや柔らかさも重要です」
平成2年に3代目山下明宏さんが社長に就任。
「後継者不足に悩む畳屋も多いですが、私は学生の頃から夏休みなどに畳の作業に触れていたので、畳屋になることに抵抗はなかったんです」
「近所に畳屋さんがあれば、傷んだ畳の張替えを考える人も多いですが、離れた地域でも、HPやブログを見て“当店に任せたい”という方が増えたらうれしいですね。三豊にも店舗を構え、職人を常駐させていますが、遠方や島にお住まいの方でも、今はリモートで畳の裏を見せて頂くことでお見積もりができる時代です。その分畳の土台の修復や型崩れを直す作業に時間をかけています」
「日本の文化は海外の人に人気で、当店でも海外の方から畳が欲しいという声を聞きます。海外に流通しているのは台湾製が多いのが残念なところです。本物の日本の畳を味わってほしいので、HPにも英語表記を入れる予定です」
「会社の強みは、技術スタッフが全員 畳または襖(表具)の国家資格を持った職人だということです。資格をとるためには学科と実技が必要なので、勉強してレベルアップを図ることが目的です」と山下さん。
謙虚な山下さんの口からは聞けなかったのですが、実は山下さんは、2年に1度、全国から色々な職種の一級技能士が集まる「技能グランプリ」に出場を続けています。全て手縫いで畳を仕上げていく畳部門においては、平成31年に四国で初の入賞を果たしています。関東や関西だけでなく四国にも技術のある職人がいるということを知って欲しかったのだそうです。
また、「金沢職人大学校」の8期生として、月1回は金沢に通っているそう。今年の9月に卒業なので、卒業制作として平安時代の畳の再現をしているところなのだとか。
店頭に並ぶ、流行りの畳のカラフルな畳縁(へり)を使ったバッグ、ポーチや、瀬戸内国際芸術祭をきっかけに生まれたリボン型のブローチ「HERIBBON」なども見せていただきました。カラフルな色や水玉などの柄もあり、畳文化を身近に感じられそうです。
Interview 2020.6.19