あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

file17 Imagine nostalgic school building昔の校舎を想い描いて

September 11, 2020

おかし工房Botan・
  ボタン木工所

大人が通う、山の中の店

香川県西部に位置する観音寺市に人気のカフェがある。晴れ渡る夏の日、でこぼこ道をぐんぐんと山の中へと進んでいくと、目に入るのは「Botan」(ぼたん)と書かれた木の看板。右折すると、白い壁に水色の扉が印象的な愛らしい店舗が現れた。
 開店と同時に次々と車が吸い込まれるようにやってくる。立地もさながら、物語に出てくる森の中のお菓子屋のような佇まいだ。
 Botanは、木工職人の平口大祐さんと、香織さんご夫婦で営む、カフェと木工所。
 この店は、かつて、近くにある粟井ダム建設の際に、現場事務所として使用されていた建物を再利用したもの。元々ここはご主人の所有地で、工事終了後にあえて事務所をそのまま残してもらったそうだ。

15年前に木工所を始め、結婚してからは奥さまがカフェをオープンした

当時ダムの作業員の休憩所としても利用されていたであろう面影を残す横長い建物を、ご主人一人で改修した。「昭和の建物が好きで、特に学校の校舎からインスピレーションを得ました」というご主人。内装は全部取り壊し、床はフローリングを貼り、壁や天井はペンキで塗ったそうだ。
 窓や引き戸は、アルミサッシが入っていたが、木製枠に入れ替えた。既存のモノではなく、昔の建具を使って一から組み立て直し、模様の入った型版ガラスを入れ、昭和レトロな雰囲気に。店内のテーブル、椅子、棚などはすべてご主人の手作りだ。
「木で作れる物は何でも自分で制作します。木材の風合いは、独特の雰囲気を醸しだすんですよ」と平口さん。おかし工房の隣に併設している木工所を覗かせてもらった。
 自然素材が好きなご主人は、ウォールナットやチーク材などを使った家具作りが得意。オーダーメイドの家具の注文にも応じていて、和菓子店用に作った納品待ちのショーケースも置かれていた。

  • 奥に見えるのは薪ストーブ。ランチも提供していたが、あまりにも込み合うので、現在は木・金曜日以外は、焼き菓子とドリンクでイートインカフェとして利用するスタイル

  • 木製のショーケースには、作り立てのマフィンや    スコーン、ケーキが並ぶ

 さて、カフェ店内に戻ると、ショーケースの中はすっかり残り少なくなっていた。窓際の席が空いたので、ゆるやかな曲線の椅子に腰を下ろした。ケーキも店の雰囲気と呼応するかのように、華美すぎないが、可愛らしい。
 カウンター越しには菓子作りをするスタッフの姿。窓からは青々とした樹々が見える。懐かしさが漂う、木製家具に囲まれた空間に、甘く芳しい焼き菓子。ふと、暑くて楽しかった小学生の頃の夏休みを思い出していた。冷たいコーヒーが届く頃、汗はすっかり引いていた。
 木工所のオープンから十五周年。より味わい深い雰囲気になったが、今後もインテリアなどをブラッシュアップしていくのだそう。
 山の中のカフェ……。わざわざ通いたい理由がここにはある。

ー2020年9月

左:昔の建具を使って手作りした引き戸。レトロな型版ガラスの模様は桜 
中:カフェで使っているトレーや皿などは販売されている 
右:敷地には、犬一匹と、保護ネコが10匹以上いるので動物好きにはたまらない。クッキーなどの焼き菓子のほか、    イラストレーターのイワサトミキさんが描くネコ雑貨も販売されているコーナー 

  • 白い壁に水色のペンキの色が引き立つ

  • かつての現場事務所の面影も残る建物。おかし工房Botanとボタン木工所は併設している。朝イチから並ぶ常連客も多い

Botan HP

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