あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

パートナーインタビュー

パートナーインタビュー

常識にとらわれず、挑戦していくものづくり

日美

高松市郷東町、JR予讃線と県道33号線が交わる高架から『日美』と大きく書かれた工場が見えます。ここは国産家具メーカーの『日美株式会社』。開発からデザイン、製造まですべて自社で一貫して行なっています。

 

遠くからでもよく見える「日美」下には、うっすらと青字で「座卓」の文字が残る。かつてはその間に「炬燵(こたつ)」も書かれていたとか

 

元々は『日本美術時計』といい、金属加工の製造会社だったそうですが、時代のニーズに合わせ、座卓・こたつの木工品製造に転身したという経緯があります。

今回お話を伺った社長の白井正人さんは、アルバイトで入社後、工場長を経て社長になったこともあり、現場を隅から隅まで知り尽くしています。

白井さんが社長に就任したのは、海外の安価な商品に市場を奪われ、売上がままならなくなった頃。何をしても業績の上がらない中、それならつくりたいものを作ろうと、当時主流であったコスト重視の量産型をやめ、品質にこだわったオリジナルの商品開発に力を入れることにしました。

 

社長の白井正人さん。職人でありアーティストとして、常に現場で新しい商品開発の構想を練っている

 

オリジナル商品はただ綺麗なだけの家具ではなく、節や割れなど素材の持つ荒々しい『ありのままのカッコよさ』を活かしたものにしたいと、敢えてヴィンテージ感を目指したと言います。まだノウハウのない時代、シャビーなエイジング加工がしたくて、板を地面に叩きつけたり擦り付けてみたこともあったとか。白井さんは当時を振り返って、「その後、木目に詰まった石を取るのが大変だった」と笑って話してくれました。

そんな試行錯誤を重ねてできたのが自社ブランド「ROUGH&TOUGH」。

木材にファブリックやアイアンを組み合わせたり、コタツの脚の切り出しの際に出る端材からも新たな商品を考えるなど、常識にこだわらない日美のオリジナリティ溢れる商品を次から次へと生み出しました。かつて培った金属加工のスキルも役に立ったと言います。

「出荷時点ではまだ未完成。家具は人の手で使い込まれて初めて完成します。暮らしの中で刻まれていくキズやシミ、経年変化などで味わいが増し、置かれている空間や人々に愛され育っていく“家族のような道具に” という思いで作っています。」

 

アイアンの加工も自社で行えるので、開発に自由度が増す

 

作業服にプライドがあるいう職人気質な白井さんは、ものづくりには終わりがなく完成がないと話します。

「ものづくりは、一度は完成だと思っても、次の日見たらどこか物足りなさを感じて、もっといいものが作れるんじゃないかってなる。その欲が人を成長させ、次の作品につながっていくと思う」。

こうしたものづくりへの情熱こそ日美の強み。時には実際にオーダーを受けた施主様宅や建築現場に足を運び、クライアントのイメージを確認しながらデザイン・設計提案することもあるというこだわりや、自由な発想が顧客のニーズにとことん向き合ったオーダーメイドの商品を可能にすると評価の声も多く、OEMの受注も増えています。

 

木の粉塵で白茶けたほの明るい工場の中は、教会のようなどこか神々しい雰囲気がある

 

白井さんの新たな試みは「開放的な工場」。

「この工場は関係者以外立ち入り禁止ではなく、もっと開かれた場所にしたい。閉鎖的になりつつある時代だからこそ、ものづくりや工場に興味がある人にはぜひ見てもらいたいし、気兼ねなく相談しに来てもらえる場所にしたいんです」

その思いは、工場の中に併設されたカフェや、子どもが木のおもちゃに触れ合えるキッズスペースにも垣間見えます。今はコロナで開催未定ですが、定期的に木材を使ったものづくりワークショップを開催するなど、誰でも足が運べる工場へと着実に叶えていっています。         (写真/三宅 伸幸)

 

工場内に併設されたカフェの家具は全て日美ブランドのもの。実際に座ってくつろげるので、家具を購入する前にカフェに立ち寄ってみるのもいい

 

時には来てくれている子どもたちと一緒に遊ぶという、カフェ向かいにあるキッズスペース。誰かを喜ばせたい思いは新たな商品開発にもつながっている

 

 

他の記事を読む

Copyright (C) IKUNAS. All Rights Reserved.