パートナーインタビュー
美しい甍屋根の風景を守り継ぐために
請川窯業
観音寺市木之郷町に瓦製造工場を構える『請川窯業』。道の両脇にずらりと積み上げられた瓦が、看板が見えるより先に目に入ります。昭和7年から続くこちらの、3代目代表取締役社長の請川和英さんにお話を伺いました。
香川県は昔から良質の粘土の産地として有名で、成形しやすい伸びのある土が採取できることから、古くから瓦産業が発展してきたといいます。
今では県内の瓦製造業者はごく僅かとなってしまいましたが、そんな中、請川窯業は原土の確保から製造、屋根の施工までを一貫して行っています。そのため、施行中に瓦の不具合があればすぐさま製造に伝えられ、間違いや無駄の少ない管理体制と優れた施工技術を可能にしています。
また暮らし方の変化により、洋風住宅向けの瓦や、地震に強い軽量の耐震乾式本瓦など、新しい瓦の開発にも力を入れています。
請川さんは、小さい頃から図画工作が得意で、瓦職人の作業風景を見るのが好きだったことから、自然と粘土細工などの造形にも興味を持ったと言います。大学卒業後は実家に戻り、後を継ぐため祖母から手作り瓦の製法を一から教え込まれたのだとか。
当時瓦製造はほぼ機械化され、手作り瓦の受注は滅多になかったものの、お寺や古くからあるお屋敷のようなところは独自の家紋や様式、特殊な装飾瓦を使うため、手作り瓦の製作は必須かつ非常に重要なものでした。しかもその手法は複雑で、順序を正しく作らないと完成しない、とても時間のかかる作業だと話します。
「でもあの時、祖母が手作り瓦の基本をしっかり叩き込んでくれたおかげで、今こうして後世に伝え残すことができています」
現在その技術は、女性鬼師として精進している山地由紀子さんへと引き継がれています。
瓦の歴史は長く、圧倒的な耐久性から1400年前の瓦が現役で使われているお寺があるほど。割れたり機能が低下した部分だけを新しく変えるだけで良いので、非常に効率的でエコな建材だとも言えます。
「現在は住宅事情が良くなり、建物が足り、余っている状態。だからこそ、伝統建築や古い建造物を再利用していくことで、物を大切にする日本の文化を受け継いでいきたい」と、請川さん。
その思いは、高松城跡桜御門復元整備工事や、旧金毘羅大芝居(金丸座)の耐震対策工事などに関わるなど、伝統建築の保存活動につながっています。他にも壊れた瓦をガーデニング材として再利用する商品開発や、出前授業・講座で瓦の魅力を子供たちや多くの方に伝える活動を通して、日本の美しい瓦葺の景観を守るために日々邁進しています。