あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-82 Bring light and functional beauty into everyday life.光と機能美で 整う、
海辺の住まい

September 04, 2026

中村谷

日常から解き放たれる、
ひとときの場所

 瀬戸内の多島美。無数の島々が織りなす穏やかな風景が、日常の窓辺に広がる。高松の海辺に佇む一室「入江邸」は、この場所ならではの魅力を取り込み、暮らしそのものを設計したマンションリノベーションだ。この住まいを選んだ理由は、とてもシンプルだ。「海が見えるから」と入江さんは話す。窓の外には島々が点在し、朝夕でその表情を変えていく。子どもの頃、連絡船が行き交い、街のネオンが水面に揺れていた記憶。そんな原風景が、いまの暮らしの中にそっと息づいている。

遠藤照明の無線制御システムにより、複数の照明の明るさや色温度を自在に調整。
暮らしのシーンに合わせて、空間の雰囲気を思いのままにつくりあげられる

ソファに横たわり、港に着くフェリーを眺める。
限られたオフ時間に訪れる、静かな癒しのひととき

 設計を手がけたのは「中村谷」。住宅や商業施設の設計・施工に加え、オーダーメイド家具も手がける。出会いは3年前、実家の医院のリノベーションがきっかけだった。「中村谷さんの設計はモダンで、合理性と美しさのバランスに優れている」と入江さんは振り返る。
 リノベーションのコンセプトは、ライフスタイルをカタチにすること。「家では料理をライフワークにしたい」という入江さんの想いから生まれた空間は、シンプルでありながら機能美あふれるデザインとして実現した。医師としての多忙な日々の中で、自宅のキッチンは単なる作業場ではなく、心地よく過ごせる居場所である。キッチン横の和室をパントリーへと改装し、木目調の収納棚には普段使わない食器や調理道具が整然と収められる。必要なときだけ取り出し、使い終われば元の場所へ。冷蔵庫もパントリー内に収められ、キッチンはいつもすっきりと落ち着いた印象を保つ。

「住めるようなパントリーにしたい」という入江さんの希望から生まれた、広々としたパントリー

 そして、この住まいのもう一つの主役は「光」だ。グレアレスのダウンライトによって光源は視界から消え、空間だけが柔らかく浮かび上がる。明るさや色温度は、料理や食事、団らん、バータイムなど暮らしのシーンに応じて自在に調整でき、一日の流れで空間は異なる表情を見せる。また、間接照明は天井設計と密接に連動。天井をフラットに揃え、変更が難しい部分には上がり天井を設けて光を仕込み、統一感のある空間を実現している。
 窓の外に広がる瀬戸内の海と島々。光に揺れる景色を眺めながら、日常が静かに交わる入江邸。機能美あふれる空間が、穏やかな時間をそっと刻む。

ー2026年4月

愛着のある食器が並ぶアイランドキッチンは、お気に入りの居場所。
ここでパソコンを開き、仕事をすることもあるそう

中村谷HP

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