あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

文学不動産

File-14 My parents appreciated this house.うれしかったのは、両親が喜んでくれたこと

August 21, 2020

佐伯工務店

趣味のスペースも確保

H邸があるのは、香川県高松市の南東部に隣接する三木町。高松市のベットタウンとして利便性を備えながらも、歴史ある民家が多い地域だ。
 今回紹介するのは、両親が住む敷地内にある、築およそ百五十年の離れをリノベーションしたもの。四十年程前には増築もしており、ご主人が高校生まで家族で住んでいた離れは、その後二十年ほど使っていなかった建物だ。
 真夏日の訪問にも関わらず、H邸のリビングダイニングは、涼を感じる。すだれ風のロールスクリーンから眺める中庭の緑は清々しく、障子や和紙など和素材を使った広々としたスペースはすっきりと片付いている。
「主人の赴任先の徳島から今年四月に香川に戻ってきました。キッチンもお気に入りのひとつです」
と話す奥さんは、さっと冷たいおしぼりとお茶を出してくれた。

キッチンのタイルやイスのデザインもアクセントに。
後ろの障子の入った収納スペースは、もともとは押入れのあった場所を活用。
持ってきた冷蔵庫のサイズに合わせて右側の収納には高さを出した

一時は取り壊しも検討したと話すご主人。
「何社も施工会社の営業の方に相談したのですが、新築を建てることを勧められることが多かったんです。でも両親から受け継いだ家を壊すのは、もったいなくて。納得できずにネットで検索して出会ったのが佐伯工務店さんでした」
「状態がいいから、この家のいいところを残して活かしましょう」という佐伯さんの言葉に救われたそうだ。
「プランを立てる時から、施工中も何度も足を運んで、細かな部分も調整してくれたおかげで、想像以上の仕上がりに、とても満足しています」とご夫婦。
 増築部分にはあまり手を加えず、八畳の和室が二部屋続いていた築百五十年の部分を、ロフト付きのリビングダイニングへと大変貌させたことで、住まい方も変わった。
 太い梁などを〝現し〟にしたことで、そのこっくりとした艶のあるダークブラウンが、インテリアのキーカラーにもなっている。

別の部屋にあったキッチンは、新たに設置した。後ろは使い勝手のよい大容量の収納にし、障子の戸を入れた。食器や食材はもちろん、冷蔵庫や炊飯器なども全て隠すことができ、生活感を感じさせない上に、障子がオリジナリティ溢れる印象に。   
 ご夫婦で、素材と色にこだわって選んだ、人造大理石のカウンターキッチン。あえてダイニングテーブルを置かず、ここで食事をとるのが二人のスタイル。
 キッチンの上はロフトで、小さな本棚とクッションが置かれている。屋根裏部屋のような、奥さまのくつろぎのスペースだ。
「お互いの趣味のスペースは譲れなかったんだよね」とご夫婦は笑って案内してくれた。
 ご主人お気に入りは、玄関の前に構えるインナーガレージ。クラシックカーとバイクが出迎えてくれる。
 お風呂、トイレなど水回りは最新の設備を投入しつつ、できる限り、ご主人が幼少期を過ごしたかつての面影を残している。

窓から見える土壁の塀や、昔からある植木などもそのままだ。ご主人のご両親が、新しくなったこの家の仕上がりを、とても喜んでいて、よく遊びにきてお茶を飲んだりしているそう。 
 ご主人が想い出を語る傍らで、窓際から優しく射し込む光にまどろんでいた猫があくびをした。

ー2020年8月

  • キッチンの奥の窓から見える景色には、
    土壁の塀と植木が昔の面影を残す

  • リビングから眺めるロフト部分。
    ご夫婦と保護猫2匹で暮らしている

直径60㎝の和風のライトも佐伯さんのチョイス。
飾り棚の後ろの壁は和紙を貼った他、漆喰も使用し、一部屋でも壁の素材感を微妙に変えている。
「この家で暮らしはじめてから、テレビをあんまり観なくなって、ゆったりと時間を楽しんでいます」とご夫婦

左:長屋の趣を残す和モダンな玄関 中:ビフォア。押入れ部分は後にキッチンの収納に 
右:二間続きの和室は今回の改築のメイン。丁寧に改修し、補強も施した。住んでいない時も、
まめに換気していたことで家を良い状態で保つことができた

ご主人の趣味のクラシックカーが出迎えてくえるインナーガレージは、男性の憧れ

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