
File-73 As a place where anyone can stop by誰もが立ち寄れる場所として
June 20, 2025
商いと暮らし
新しい事業の始まり
瀬戸内国際芸術祭の開催などで、日本国内のみならず世界中から観光客が訪れる香川県。今回は、そんな香川県高松市でゲストハウス「simasima」を運営する、森さん夫妻を訪ねました。夫妻が運営する7軒のうちの一つ、松福町にあるゲストハウスは、民泊施設の中でも珍しいホスト滞在型。夫妻が暮らす3階建ての住まいの1階を、ゲストハウスとして貸し出しています。
森さん夫妻が民泊事業を始めたのは、5年前。当時勤めていた会社を辞め、次の仕事を探していた夫の亮介さん。その時に思い出したのが、取引先の人が運営する民泊の話でした。「それまで全く民泊の事は知らなかったのですが、話を聞くうちに自分でもできるのではと思うようになりました」と話す亮介さん。1階の部屋が空いており、初期費用がかからなかったこともあり、挑戦してみようと考えたそう。
この亮介さんの話に最初は不安を感じたという妻の理恵さん。「トイレやキッチン、洗面台は1階にありましたが、2階にあるお風呂を一緒に使用しないといけないことに抵抗がありました」。しかし、亮介さんの熱意に押され、既に施工が決まっていた2階のリフォームが始まるまでの1カ月、お試しで営業を始めてみることにしました。
その後、準備期間を経てスタート。不安があったものの、金額を安くしていたこともあり、開始してすぐにすべての予約が埋まったそう。やってみると想像していたよりも面白かったと話す理恵さん。「海外からのゲストが多かったのですが、綺麗に部屋を使ってくれたり、物静かでイメージが変わりました」。民泊に抱いていた先入観が変わったことや、ホストが一緒の家でも需要があることが分かり、本格的に取り組むことにしましたが、その矢先にコロナ禍に。
「コロナが終われば、必ず観光客が戻ってくるはず。前準備としてレンタルスペースの運営を始めました」。そしてコロナ後、すべてを民泊に切り替え、事業を本格始動させました。

さぬき市にある古民家をゲストハウスに。和の雰囲気が海外の人に人気

左:共同の浴室。使う時には札やメッセージで連絡
右:インテリアコーディネーターの理恵さんセレクトの家具。最近はホテルや民泊施設のデザイン依頼もあるそう
民泊から広がる縁
ゲストハウスである1階の部屋を出て、階段を上ったところには夫妻の住まいがあります。部屋を繋げて一つにした空間は、理恵さんたっての希望。扉を開けた正面には大勢で囲めるテーブルがあり、テレビとソファがあるくつろぎスペースにつながっています。左側には広いダイニングキッチンとカウンター。「料理をふるまったりすることが好きだったこともあり、みんなが気楽に立ち寄れるような場所にしたいと2人で話していました」と理恵さん。
友人だけではなく、宿泊したゲストを2階に招いて一緒に過ごすことも。さまざまな国の人と交流するのが楽しいと話す亮介さん。韓国からのゲストに花束をもらったり、香港旅行の際にかつて宿泊してくれたゲストと食事に行ったり、逆に台湾旅行で出会った人が宿泊に来たり…。日本だけでなく、さまざまな国のゲストとの交流が世界をどんどん広げてくれています。

左:部屋に置かれたお菓子や紅茶。ちょっとした心配りが嬉しい
右:出張料理やケータリングサービスも行う理恵さん。地方や海外で食べた美味しいものを再現することが好きだそう
このように交流が続くのは、森さん夫妻のあたたかなおもてなしがあってこそ。掃除が行き届いた部屋はもちろんのこと、ゲストへのメッセージや飲み物、お菓子など、ゲストのことを考えた2人の細やかな心遣いが散りばめられていました。
直接運営する7軒に加えて、今年から不動産投資家や建設会社、友人から相談を受けて、運営代行事業も始めた夫妻。また、同じ民泊を運営する仲間から誘われ、四国の民泊グループ「四国インバウンド民泊コミュニティ」の代表にも。さらに、XやYouTubeなどの情報発信が注目され、東京で開催された民泊ビジネスセミナー「ホストEXPO」の登壇者になるなど、2人の活動は香川に留まらず、全国に広がっています。
「みんながハッピーになれる仕事」だと笑顔で話す亮介さん。民泊を通して、さらなる縁が繋がります。
ー2024年11月

ゲストハウスとして貸し出している一階の部屋。キッチンやテレビ、ベッドが備え付けられている

料理が好きな理恵さんに合わせて作られた広いダイニングキッチン。料理をしながらゲストと話せるようにカウンターも備え付けた

料理恵さんこだわりのインテリア。好きなものだけを置いたお気に入りの空間