あき家(空き家)とリノベ ときどきリフォーム

パートナーインタビュー

パートナーインタビュー

ライフスタイルから、その場所にふさわしい「境」を作る

藤堂建築設計事務所

屋島の麓にある藤堂建築設計事務所。主に、住宅の設計、リフォーム、店舗設計、エクステリアの設計、確認申請の代行業務、ヘリテージマネージャーとしての活動などを行っています。2018年に設立し、代表の藤堂誠司さんが最初に手掛けた建築物が自身の事務所でした。太陽に向かって伸びる庭の植物たち、木目の美しさにこだわった柱や梁、室内の光を調整する竹の格子など、ありのままの自然素材の特質を活かして、ゆるやかに境を作っている空間は、藤堂さんの家づくりの思いが表現されています。

左:事務所外観 右:庭に植えている植物の図面。約40〜50種類の植物が育つ。建物による影響や日の当たり具合を見て、植える場所を変えている

打ち合わせスペース。柱の木目は、4面から一番美しい面を選んで、打ち合わせスペース側に向けている。事務所に入るとよくわかるが、晴れた日は庭の葉っぱの色が反射して、室内の壁がほんのり黄緑色に色づく

藤堂さんが建築に興味を持つようになったきっかけは、水道業を営んでいた祖父が自宅の設計図面を描いていたことでした。祖父が設計した家が古びてきているのを目の当たりにして、自分で家を建てられるようになりたいという思いが、心の中でふつふつと湧き上がっていたといいます。

祖父と同じ高松工芸高校の建築科を卒業後、熊本県の崇城大学工学部建築学科に進学。そこで意匠系の建築物の歴史に触れ、建築をやってみたいと明確な思いが生まれました。
大学院を卒業した頃から、独立したい思いを秘めながら、1年間東京の著名なアトリエ系の設計事務所を転々と働き、その後香川県の蔭久設計事務所で7年間在籍。現場で職人さんとやり取りする時に使う施工図や具体的な製作図、見積もりをするための実施設計図を書いたり、建築の設計提案などを行ったりしてきました。そして、仕事をしながら試験の勉強に励み、27歳の時に一級建築士の資格を取得しました。

藤堂さんの建築は、風土や環境に関わる境の空間が丁寧に作られており、古来からある日本の軒や障子、格子、垣根、階段、縁側、暖簾、道具などを現代的に解釈して取り入れ、空間をゆるやかに、そして柔らかく繋げています。「昔からの原風景のように、自然との繋がりがあって、初めて家が気持ちよく感じると思うので、そこは大切にしていきたいですね」と藤堂さんは話します。

施主の自然素材に囲まれた空間と池の眺めを建物の軸に考えて欲しいという思いを尊重し、作り上げた建物。素材が持つ時間に触れながら、素材が主張することなく自然に馴染んでいくようなデザインを心がけたそう

 

蹴込みの無い階段やリズミカルな柱が並び、ゆるやかな境界や柔らかな光を作る

料理を友人や親戚に振る舞うことが好きな施主のために、壁を取り除き、大人数が集まれるコの字型の広いオープンキッチンへとリフォーム 左:Before 右:After

お子様が巣立って空いた部屋を客間に変更し、玄関収納の扉を、客間へ直接入れる入り口へとリフォーム 左:Before 右:After

また、現在は住宅全体のリフォームではなく、小さなリフォームもしているそう。昔は地域の大工さんに頼んでちょこっと直してもらうことがよくありましたが、最近はそういった光景が全くなくなっています。藤堂さんは、お客様の要望が部分的な場合、金額が少額になりやすいため、工務店に頼みづらく結局どこに相談したら良いかわからないお客様がいることを知りました。そこで、小さな困りごとを気軽に話せて、材料の手配や見積もりができる場所を作りたいと思い、2024年から相談を受けているそうです。
外壁の塗り替えやコウモリ除けのネットの取り付け、窓から植物が見えるプランターなど、家のある一箇所のリフォームの要望にも応えています。

民家とお茶室が好きな藤堂さんは、茶道を習っているそう。四国八十八箇所の遍路道を歩いて植物を見るのも好き。他にも、水泳や料理、音楽、読書、家庭菜園など幅広い趣味を持っている

「一般的には建築物が出来上がってから、外構をするので、外と中を分けてしまうことが多いですが、その壁を超え、建物単体ではなく、暮らし全体を見つめながら、住う人の思いや営みに寄り添い、自然が感じられる建築を作り続けていきたい」と話してくれました。

Interview 2025.9.10

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