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本島

伝統的建造物群保存地区の街並みとグルメを巡る旅

September 22, 2021

丸亀港から船で約35分で行ける瀬戸内の島、塩飽諸島の一つ「本島」は、操船・造船技術に長け、古代より数々の歴史に深く関わりを持ってきた島だ。香川県では唯一、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された笠島地区など、他にも島の見所は多々あるが、せっかく訪れるなら島ならではの新鮮な材料を使った食処も押さえておきたい。ここでしか味わえない、そんなグルメスポットを探して訪ねた。

 

 

 

島の中と外をつなぐカフェ

<Honjima Stand>

丸亀港からフェリーに乗ること約35分。本島港のすぐ横にある瓦屋根が立派な建物「本島パークセンター」の中に「Honjima Stand」はある。2018年にオープンした、香川県丸亀市の北欧家具のセレクトショップ「CONNECT」が手がけるカフェである。

 

 

この店の特徴は、なんといっても目の前に広がる瀬戸内海。瀬戸大橋や行き交う船がよく見える。そして、家具店が手がけているだけあって、店内のインテリアや使われている食器のセンスも抜群。のんびりとした居心地のよい空気が流れている。

 

 

Honjima Standの料理を手がけるのは、丸亀出身でフランスでの料理修行の経験もあるシェフの岩井大暉さん。地元の漁師さんから直接仕入れた魚介や地元の野菜でつくる、見た目にも美しいランチセットがおすすめだ。

この日の魚料理のメインは「本島ビングシのポシェ ソースヴァンブラン」。鯛よりも脂がのっているという白身魚のビングシを昆布と野菜で出汁をとったブイヨンで蒸し、香川県産のアスパラや青ネギを添えて、白ワインソースをかけた本格的な味。

 

 

肉料理のメインは「厚切り豚のラタトゥイユ」。野菜と肉の旨味がぎゅっと詰まっていて、ごはんが進む一皿。ラタトゥイユに使われている野菜の一部は、本島の自家農園で採れたもの。店から車で数分のところにある農園では、とうもろこしにきゅうり、ナス、トマトがつやつやと元気に実っていた。近所の方のご好意で畑を借りて、無農薬で育てているそう。

 

 

Honjima Standのコンセプトは「島の中の人と外の人をつなぐレセプション」。店内でくつろいでいると、コーヒーを飲みにきた漁師さんが魚や島のことを教えてくれた。オープンから3年が経ち、本島の人にとっても旅行客にとっても居心地がいい交流の場として、大切な役割を担っている。最後に岩井さんが教えてくれた。「Hojima Standのロゴをよく見てください、 “AND”が見えてくるでしょう? そこには“島の中と外をつなぐ”という意味が込められているんですよ」

 

Honjima Stand 本島観光案内所内/tel.070-2301-5862(水、木曜定休日、その他臨時休業あり)

 

 

 

 

地元の人たちの憩いの場

<茶房 伊達>

本島港から、本島小中学校や塩飽勤番所跡地を通りすぎてしばらく歩くと、小さな公園にたどり着く。その先に見えてくるのが、エメラルドグリーンの壁が目印の喫茶店「茶房 伊達」である。

 

 

日曜の昼過ぎ、店内をのぞくと、どこか懐かしくて味のある雰囲気で、テレビの野球中継を見ながらお客さんたちが盛り上がっている。カウンター越しに「いらっしゃい」と声をかけてくれたのは、店主の岡田忠行さん。岡田さんは本島生まれ、本島育ち。京都で割烹料理の修行をして、33年前に本島に戻って店を開いたという。「ちょうど瀬戸大橋がかかった頃で、サンフランシスコみたいな景色だと思ったよ」と話してくれた。店から少し歩くと、海岸から瀬戸大橋が見渡せる絶景が広がっている。

 

 

営業日や営業時間は店主のその日の気分次第。店が開いている時は朝6時オープンで、パンとゆで卵、サラダがセットのモーニングが食べられる。平日のランチは、タイ、サワラ、キス、タコ、イカなど島で獲れた旬の魚介や、本島の野菜を使った日替わり定食がなんと600円! 刺身やフライなど、その日のメニューを楽しみにしている地元の人も多い。

話を伺っていると、次々となじみのお客さんが入ってきては、岡田さんに大きなキャベツや、まだピチピチ飛び跳ねているエビを手渡して席につく。「うちのお客さんは、漁師や畑で野菜をつくってる人が多いから、持ってきてもらうの。今からエビをゆでるから食べてきなよ」そう言われて待つこと数分。プリッと赤い皿いっぱいのエビが目の前に。常連さんたちとの会話に混ぜてもらいながら、あまりのおいしさにぺろっと平げた。このエビはサービスというから驚きだ。

 

 

日曜はランチ定食はやっていないため、焼き飯と卵汁をつくってくれた。一見何気ない料理でも、割烹料理店で修行した岡田さんの手にかかるとごちそうになる。常連さんのおすすめはたまに登場するカレー。「見た目はごく普通のカレーだけど、すごくおいしい」とのこと。

本島散策のランチでは、気さくな店主をはじめ、島に暮らす人たちとの交流も楽しめる、アットホームな「茶房 伊達」にぜひ立ち寄ってみては?

 

茶房 伊達 /tel.0877-27-3016(不定休のため要事前電話予約)

 

 

 

 

歴史的な古民家に滞在できる民宿

<やかた船>

本島港から徒歩で20分ほど、昔ながらの建物が美しい笠島まち並み保存地区の一角にある「やかた船」は、おいしい魚介類が食べられると評判の民宿である。本館は築140年以上、別館は築216年以上というから驚きだ。歴史的にも価値のある建物に泊まれるなんて、なんと贅沢なことだろう。

 

 

「本島には泊まれる場所が少ない」という声に応え、女将の髙島八重美さんが2012年にオープン。かつて国内海運に広く使われていた木造帆船・千石船を模した、カーブした土壁があることから「やかた船」と名付けられた。民宿なので宿泊客が優先となるが、事前に電話で予約すれば、2名からランチのみの利用も可能。

 

 

お客さんからの希望を受けてメニューを考えるという髙島さん。この日はカニが食べたいというリクエストにこたえて、瀬戸内海で獲れた大きなワタリガニがメインに。その他にもお刺身や茶碗蒸し、小鉢が並ぶ。中でもアコウの煮付けは定番の一品だ。

 

 

「ぜひお庭も見ていって」と言う髙島さんの案内で中庭へ。色とりどりの紫陽花や朝顔があふれんばかりに咲いている。「お客さんに季節ごとの花を楽しんでもらいたい」と手塩にかけて育てているそう。

中庭ではバーベキューもできるので、大学生の合宿にもおすすめ。自然を感じながら、のんびりとした島時間を過ごすのに最適な宿だ。

 

やかた船 /tel.080-3886-9819(営業日は電話にてご確認ください)

 

 

 

瀬戸内の魚を目と舌で楽しめる

<gallery & cafe 吾亦紅>

 

国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されていて、江戸時代から続く美しいまち並みが残る本島の笠島集落。その一角にある「gallery & cafe 吾亦紅(われもこう)」は、瀬戸内の魚の絵を観ながら、おいしいランチがいただけるギャラリー兼カフェである。

 

 

この店は店主の長本朝子さんが、本島出身で今は亡き夫の悦司さんが遺した魚の絵を、ぜひ多くの人に見てもらいたいという想いから、2013年9月にオープンした。第2回の瀬戸内国際芸術祭・秋会期が始まる少し前のことだった。

 

 

店内は畳敷きの落ち着いた和室で、格子窓から差し込むやわらかい光に包まれている。まず目に飛び込んでくるのは、床の間に飾られたたくさんの魚の細密画。カワハギ、鯛、カサゴ、タコなど、瀬戸内海が大好きだったという悦司さんが描いた作品である。鱗のひとつひとつまでがリアルな魚たちの絵に見入っていると、テーブルに本物の大きな鯛が登場!

 

 

吾亦紅の名物料理「鯛のアクアパッツァ」である。「地元の漁師さんから直接仕入れた鯛のよさを活かすため、シンプルな味付けを心がけています」という朝子さん。味のポイントは香川・丸亀産のにんにくと本島産の赤唐辛子「本鷹」。温めたオリーブオイルににんにくと赤唐辛子を抽出してから、鯛や野菜を入れると、シンプルながらも深い味わいに。そのほかにも、彩り豊かな野菜カレーや挽きたて豆のコーヒーもおすすめ。

悦司さんが描いた魚の絵はポストカードとして販売されているので、食後には旅の思い出をしたためて、すぐ近くにある昔ながらの筒型ポストに投函してみるのも一興だ。

 

gallery & cafe 吾亦紅/tel.0877-27-3007、090-7575-3827(要事前予約)

 

 

 

 

海を見ながらのんびりと過ごせるパン屋さん

<honjima bakery>

 

本島の笠島港のほど近く、メガネとコック帽のかわいい看板が目印の白い建物の2階にある「honjima bakery」は、週末だけオープンするパン屋さんである。階段を上がって店内に入ると、焼きたてのパンの香りと、窓に広がる瀬戸大橋と島々と海の景色に思わずうっとり。店主のたけだまさこさんは岡山県出身で、料理学校「ル・コルドン・ブルー」でフランス式のパンを学んだのち、ル・コルドン・ブルーに就職。その後、フランス人シェフに師事してパン修業を積み、2016年にhonjima bakeryをオープンした。

 

 

「できるだけ焼きたてを食べてもらいたい」という想いから、フェリーの到着時刻に合わせて焼き上げるというhonjima bakeryのパンは、定番の食パンからもっちりしたベーグル、旬の果物や野菜がのったトーストなど、たくさんの種類が並ぶ。どれも見るからにおいしそうで、ついあれもこれもと手が伸びてしまう。パンの他にもグラノーラや自家製ジャム、たけださんとつながりのある作家が手がけた雑貨なども販売しているので、島旅のお土産にもぴったりだ。

 

 

honjima bakeryを訪れるお客さんは地元の人や旅行客などさまざまで、瀬戸内国際芸術祭の期間中には、連日多くの人々がアートめぐりの合間に立ち寄ったという。購入したパンは店内でいただくことも可能で、パンのお供にはフルーツを使った季節のドリンクがおすすめ。たけださんが集めた、料理や瀬戸内に関する本も自由に読めるので、おいしいパンを食べ、本を読み、たまにふっと海を眺めながら、のんびりとした島時間が過ごせそう。

 

 

旅とおいしいものが大好きという店主のたけださんは、ふらりと旅に出かけたり、島外で開催されるイベントに出店することもよくあるそうなので、店を訪れる前には必ずFacebookページで営業日を確認してほしい。季節のパンセットをお届けする通販のお知らせもFacebookで告知されるので、ぜひこまめにチェックしてみては?

 

honjima bakery/https://www.facebook.com/honjimabakery

 

※お店の詳しい情報は、「アキリノ paper NO.4」にも掲載しています。

詳しくは アキリノHPをご覧ください。

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